武器貸与法と軍産複合体のアメリカ

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 9日、米国で武器貸与法が成立した。ウクライナに対する武器供与を迅速に、簡略に行える法律だという。バイデン大統領は「ウクライナの人々が民主主義を守るための重要な手段を提供することになる」と述べた。
自由とは銃で守るものだなんて
そんな愚か者たちの言葉を聞きいれてはならない
この戯言を信じた者たちは
ずっと前に死んでしまったんだから
武器商人たちにはみんな、可愛い子どもたちがいるというのに
哀れな人たちを死地に送り込むのはお金のため
太古の大昔からそう決まってるのさ
信者たち、祖国が口実
ふざけた話さ
油田のために何人の命が犠牲になっただろう (―ピエール・ペレPierre Perret「クルドの少女La petite Kurde」)

ピエール・ペレPierre Perret「クルドの少女La petite Kurde」


 冷戦の終焉によって、ソ連の勢力圏に米国とNATOが割り込んでいった。冷戦時代、世界最大の武器売却国は米国とソ連だったが、ライバルだったソ連の崩壊によって、米国防総省がその予算の縮小を約束する一方で、米国の軍需産業はかつてのソ連の勢力圏に対する武器売却に躍起となった。NATOは、旧東ドイツ、ポーランド、ハンガリー、エストニア、リトアニア、ブルガリア、ルーマニアなどに拡大し、NATOの拡大は同時に米国の軍需産業の市場の拡大も意味した。
 冷戦時代は、ソ連をはじめとする共産圏が悪で、米国など自由主義陣営は善という二元的価値観が米国人の間で定着していったが、冷戦が終わると、イスラムは悪で、キリスト教世界は善という二元論が生まれることになる。そして米軍がアフガニスタンから撤退した現在、米国にとって格好の「悪」であるプーチン大統領が登場することになった。昨年8月末に米軍がアフガニスタンから撤退し、米軍と戦っていたタリバンが政権を奪取し、イスラムとの戦いに敗北した形となっただけに、米国が武器を供与するウクライナがロシアに善戦していることは、米国の自信や威信をある意味で回復させることになった。

武器を与えるだけで良いのだろうか。米国にはロシアと対話する必要があると思うのだが・・・。
https://www.youtube.com/watch?v=1evMOKUZRK4


 4月下旬、米国のオースティン国防長官は、ロシアがウクライナ侵攻のような行動をとれないまで弱体化するのを見たいと語ったが、それは戦争が早期に終結するのではなくて、長期化することを望んでいるようにも聞こえた。ロシアの弱体化は1カ月、2カ月の戦闘ではもたらされず、戦争の長期化で最も苦しむのはウクライナ国民たちであることは言うまでもない。
 米国務省のジャリナ・ポーター副報道官は6日の記者会見で、イスラエルによる占領地であるヨルダン川西岸における4000戸の住宅の新たな建設を非難した。バイデン政権は、ロシアのウクライナ侵攻については経済制裁を加え、ウクライナに武器を与え、ウクライナ人が抵抗できる能力を身につけるようにしている。

プーチンは元気がないように見えました
https://cdn.tv-osaka.co.jp/yasashii/news/?p=41030


 しかし、イスラエルの占領を受けるパレスチナ人には武器を供与することも、イスラエル経済を壊すような姿勢は米国にはまるでない。ロシアとイスラエルは本質的な同様なことをしているが、米国の対応がまるで違うことも、米国の不義と見なされ、米国に対するテロの要因となる可能性がある。米国はテロを軍事力で封じようとしたが、人の心は軍事力で変わることはなく、軍事力で米国が説く「自由」とか「民主主義」は実現できなかった。それはロシアの軍事力にウクライナの人々が屈服することなく、ロシア支配を拒絶していることと同様だ。

アイキャッチ画像は 

ロシア軍のウクライナ侵攻に抗議する在日ウクライナ人ら=2022年2月26日、東京・渋谷駅前(いずれも隈崎稔樹氏撮影)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/162537

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