5月8日の戦勝記念日は戦争を反省する日 ―戦勝国は反省しない

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 第2次世界大戦でナチス・ドイツが連合国側に降伏した5月8日の記念日に、ドイツのショルツ首相がテレビ演説を行い、戦争や集団虐殺、独裁を二度と起こさないことが「5月8日の教訓」と述べた。ショルツ氏はドイツが人道に反する罪を犯したと述べた上で、現在同様に暴力が法を破ることを見るのはつらいとも述べている。
 他方で、ナチスをウクライナから軍事力で排除しようとしているロシアのプーチン大統領は、ロシアに暴力をふるったナチスに対する暴力は正当化されると思い込んでいるように見える。
 ドイツのヘルツォーグ大統領は1995年2月に行われたドレスデン空爆50年の追悼式典で「命を命で、苦しみを苦しみで、死の恐怖を死の恐怖で、追放を追放で、戦慄を戦慄で、辱めを辱めで相殺することはできない。人間の悲しみは相殺できないのだ。悲しみは、共感と思慮と学ぶことをつうじて、ともに克服されるのでなければならない」と語った。

ヘルツォーグ元大統領とメルケル元首相
https://www.br.de/nachricht/roman-herzog-zeitstrahl-100.html


 3日間にわたる英米の連合軍の空爆でドレスデンの市域の8割以上が破壊され、市民25,000人が犠牲になった。ヘルツォーグ元大統領は、追悼式典には英米の軍関係者たちも参加していたが、次のように語った。
「ここに参集された誰ひとりとして、告発されることも、後悔や自責の念を求められることはない。また誰ひとり、この出来事(ドレスデン空襲)がナチス国家におけるドイツ人の悪行によって相殺されると考える方はいない」
 アフガニスタンでは、中村哲医師が著書の中でたびたび書いているように、日本に対する良好な感情がある。それは、この国に日本が軍事的関与を行ってこなかったからだ。静岡県島田市で医療活動を行うアフガニスタン人医師のレシャード・カレッドさんはアフガニスタンで評判がいいのは復興に一番真摯に取り組んでいる日本とドイツだと語っていた。日本とドイツが中東イスラム世界で評判が良いのは、自動車などのテクノロジーとともに、第二次世界大戦の反省に立って平和国家として歩んできたからだ。日本と西ドイツが高度経済成長を遂げることができたのは、アメリカとは異なって軍事に莫大な費用をかけることがなかったこともあるだろう。

日本の政治家も光る言葉を遺してほしいものです。
https://www.sejp.net/archives/1899


 それに対して戦勝国のロシアや米国、イギリス、フランスなどには戦争への反省がなく、ロシアのウクライナやシリアへの軍事介入、また米国やイギリスはイラク、アフガニスタン戦争、フランスはシリア・リビア空爆など他国への軍事的な干渉を平気とも言えるように行ってきた。

ドレスデンにも行ったことがありますが、写真が見つかりませんでした。同じ頃行った旧東独のライプツィヒで。2001年2月。


 特にロシアでは5月8日は「戦勝記念日」というネーミングのように、第二次世界大戦におけるナチスに勝利したナショナリズムに強く訴える日で、ロシアが第二次世界大戦において犯した人道に対する罪、「カティンの森」などの虐殺を反省することはない。かつてエリツィン元大統領は1993年10月に訪日した際に、日本人将兵たちを収容し、強制労働に従事させたことを謝罪したが、その反省に立つこともプーチン大統領にはまったくなさそうだ。ましてやソ連軍の参戦が朝鮮半島の分断や北方領土問題になっているという反省に立つこともないだろう。

ロシアによるウクライナ侵攻に抗議するデモの参加者。英ロンドンで(2022年2月25日撮影)。(c)Tolga Akmen / AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3392075?pid=24254221

アイキャッチ画像は 

ロシアによるウクライナ侵攻に抗議するデモの参加者ら。米首都ワシントンで(2022年2月24日撮影)。(c)MANDEL NGAN / AFP
https://www.afpbb.com/articles/-/3392075?pid=24254204

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