漫画「アラーの使者」は日本人の正義を説く

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 昨日、11月3日は「文化の日」であるとともに、漫画家の手塚治虫氏の誕生日でもあるが、さらに「まんがの日」でもある。「まんがの日」は「漫画を文化として認知してもらいたい」という思いから、日本漫画家協会と出版社5社によって2002年に「文化の日」が「まんがの日」と定められた。


 日本の漫画が中東イスラム世界で人気があることはいろんなところで書いてきたが、社会正義や相互扶助などイスラムで強調する徳が日本の漫画の中で表現されるところも、人気の背景としてあるだろう。イラクをはじめアラブ世界では、宇宙征服を目論む支配者ベガ大王と戦う「UFOロボ グレンダイザー」は大変人気があるし、チームメートが互いに支え合う「キャプテン翼」はアラブ風に「キャプテン・マージド」となって広い階層に愛好されてきた。


 「月光仮面」の川内広範の原作、九里一平の漫画によって『冒険王』に1960年8月号から翌年1月号まで連載された「アラーの使者」という漫画がある。「アラー」とは言うまでもなくイスラムの「神」のことだが、中東やイスラム世界とは縁遠かった時代にイスラムの神が日本の漫画のタイトルになっていたことは驚きでもある。


 ストーリーは、中東に存在したカバヤン王国の財宝を王族の子孫ココナツ王子と妹のマミイが探し求めるようになるのだが、それを聞きつけた悪の一味「紅蜥蜴(べにとかげ)団」が財宝を横取りしようとして王子たちを襲う。そこに王子たちの救出のために現われたのが正義の戦士「アラーの使者」こと日本人青年の鳴海五郎であった。「アラーの使者」は「正しい人を守るためには、世界中のどこにでも現われるのだ!」と語る。つまり、「アラーの使者」は世界正義のために行動する人なのだが、現在の中東イスラム世界の人々も日本がいつでも世界正義の側についていてほしいと願っていることは間違いない。

赤塚不二夫「九平とねえちゃん」より


 イラン核合意やイスラエル・パレスチナの二国家共存を支持し、中東イスラム世界に対する教育や医療・社会インフラ支援を行うことなどは正しい方針で、特に後者はアフガニスタンの中村哲医師の活動などに顕著に見られるように、現地の人々から高く評価されている。


 「目の前でわが子や父母の死を見なくてはならなかった何百何千万の人々がいるのです。常に死におびやかされつつ、殺さなくてはならなかった兵士たち。戦争で負った心の傷も、肉体の傷以上に深く、到底いやされるものではありません。こんなことも、もうぼくらの世代で永遠に打ち止めにしたいと、切に願います。」(手塚治虫「ガラスの地球を救え」から)

手塚治虫「ブラックジャック」より


 こんな手塚氏の想いを後押しし続ける日本や日本人、日本の漫画であり続けてほしい。特に政治の分野では、米国の気まぐれな政権につき合うことで、日本のイメージを汚すようなことはあってはならないと思う。

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