「対テロ戦争20年」はいったい何だったのか ―ナチス・ドイツの手口を学んだアメリカの「フランケンシュタイン」育成

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Translation / 翻訳

 米軍がアフガニスタンから撤退後、フェイスブックの友達でもある布施 祐仁さんから私がインタビューを受けた『平和新聞』が届いた。「『対テロ戦争20年』はいったい何だったのか」という特集で布施さんからインタビューを受け、それをまとめて記事にして頂いたものだ。アメリカは「対テロ戦争」でイスラム世界を結局変えられずに、民主主義や安定をもたらすことができなかったばかりか、事態をいっそう悪化させてアフガニスタンから撤退した。タリバンはアメリカが1980年代に支援したアフガニスタンのムジャヒディンから発展していったが、イスラム勢力を支援したのは、麻生副首相・財務相ではないが、ソ連と戦ったナチスの手口を学んだものだった。

『平和新聞』
「対テロ戦争」とはいったい何だったのか


 反米テロの要因は依然として根強くイスラム世界には残っている。特に反米テロの国際的要因には、アメリカのイスラム世界への軍事介入、イスラムの聖地があるサウジアラビアに米軍が駐留すること、国際法を破る同盟国のイスラエルを偏って支援することなどがあり、オサマ・ビンラディンをはじめとするアルカイダはこれらの要因を背景に、アメリカに対する反発を強め、テロを考えた。これらの要因がこの20年間で改善されたとは思えない。


 それと歴史的には、アメリカへのテロの国際的要因には1980年代のアフガニスタンでのムジャヒディンによる反ソの武力闘争にアメリカが支援を与えたことが、後にアメリカに牙を剥く「フランケンシュタイン」になるアルカイダやタリバンとなっていった。ソ連の傀儡である人民党政権が成立した1978年から同政権が崩壊した1992年までの間、アメリカはおよそ60億ドルとも見積もられる支援をムジャヒディンに対して行った。

続き


 アフガニスタンのムジャヒディンを支援することは、カーター政権の下で構想され、ズビグニュー・ブレジンスキー安全保障担当大統領補佐官は、イスラム勢力を支援し、それがアフガニスタンからソ連中央アジアのイスラム系共和国のイスラム復興をもたらし、ソ連を弱体化できるものと考えていた。ブレジンスキー補佐官は、アフガニスタンがソ連の支配下に入ることは中東イスラム世界の石油産油国へのソ連の政治的・軍事的進出につながると述べた。アメリカはソ連軍の侵攻に抵抗するあらゆるムジャヒディン組織に対して支援を与えることになる。そうしたムジャヒディンの中には厳格なイスラム主義組織や、反米を唱えるものもあった。

ロシアのモデル
ダリア・ペトロワ
https://www.bialymodels.com/blog/category/russian-model


 ソ連に対してイスラム勢力を利用しようとするのは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツが考案したものだった。冷戦という環境下でイスラムを利用しようとする発想は、CIA(中央情報局)によってソ連軍のアフガニスタン侵攻以前にも行われ、CIAは1954年にメッカ巡礼に、ムスリムのスパイを送り込み、反ソ・アジテーションを行わせた。こうしたムスリムのスパイには第二次世界大戦中にナチスのソ連侵攻に呼応し、ソ連軍と戦ったソ連国内のムスリムたちが利用された。アメリカは、ムスリムをソ連と戦わせたナチスの「東部占領地域省(Ostministerium)」の手法を真似たのだった。


 1990年代になると、アメリカが供給した武器や資金で反米テロを行うアルカイダの活動が活発になったが、現在はやはりアメリカが「対テロ戦争」で提供した武器・弾薬がアフガニスタンに大量に残り、それが「ISホラサーン州(IS-K)」などによってアメリカや同盟国に対するテロに使われる可能性は否定できない。

アイキャッチ画像は

アフガニスタンのムジャヒディン
若いですね
https://www.pinterest.jp/psychalafy/mujahideen-%D9%85%D8%AC%D8%A7%D9%87%D8%AF%D9%8A%D9%86/?fbclid=IwAR2a80TI7LSqDpkc1IoPyJrdlNTQgQkLpBeIbxUvDh1p4YjJwVTFyqwBVmg

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