アフガニスタンで活動する過激派は中央アジア出身者を主体とする

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 アフガニスタンで活動するのはIS支部の「ISホラサーン州(ISKP)」という組織だ。


 ISKPには中央アジア出身者が多いが、彼らはシリア内戦などに参加して軍事技術を身につけ、ISが国際的テロ・ネットワークを築くことにある意味で一翼を担っている。中央アジア諸国政府による政治的抑圧から国外に逃れ、また経済的にはロシアなどに出稼ぎ労働を行っていたものの、コロナ禍や、ウクライナ戦争でロシアが経済制裁を受ける中で職を失い、またロシア国内で人種差別を受けるなど経済的困苦や社会的疎外感などから過激派の活動に身を投ずる中央アジア出身者たちがいる。

カンダハル、JICAがつくった道路。現地では「オガタ・ロード」と呼ばれていた。


 シリア内戦はISが中央アジアも含む国際的テロ・ネットワークを築く絶好の機会だった。たとえば、タジキスタンの警察特殊部隊司令官であったグルムロド・ハリモフはその軍事的知識などでISの戦争相に上りつめた。また、中央アジア出身者たちは、16年6月にイスタンブールのアタチュルク国際空港を襲撃し45人が犠牲となり、17年元旦にイスタンブールのナイトクラブ「レイナ」を襲撃し、39人が犠牲になった事件などに関与した。17年4月3日にロシア・サンクトペテルブルクの地下鉄で自爆テロを起こしたのもキルギス出身者だった。同月7日にはストックホルムでウズベキスタン人がトラックで歩行者たちに突入し、4人が死亡した。中央アジア出身者たちはISの活動の先鋭的な性格を担っている。


 ロシア国内では中央アジア出身者などイスラム系住民に対するヘイトが存在し、ネオナチの活動も見られる。ロシアのプーチン大統領はウクライナからナチスを一掃すると言って侵攻を始めたが、ロシアでは、タジキスタンやキルギスなどの中央アジアからの出稼ぎ労働者、ダゲスタンなどカフカスのムスリムたちがネオナチのヘイトクライムの対象となり、ロシアは民族的マイノリティにとっては最も危険な国と言われてきた。2000年代には9歳のタジク人の少女がスキンヘッドの集団に刺殺される事件が発生したり、ネオナチの集団がタジク人とダゲスタン人の青年を斬首する動画をネットにアップしたりすることもあった。

カンダハル、JICAがつくった道路。現地では「オガタ・ロード」と呼ばれていた。


 このように、中央アジア出身のISの活動家たちにはロシアを恨む背景があるが、ウクライナ戦争が長期化し、ロシア経済がいっそう苦境に追い込まれれば、ISの活動に身を投ずる若者たちは増加するに違いない。


 ウクライナ戦争は国際社会の目をいっそうアフガニスタンから遠ざけることになっている。アフガニスタンは米国による中央銀行の資産凍結、干ばつなどでかつてないほどの人道危機に直面している。小麦やパンの価格は1年前から2倍に上昇して、自死、物乞い、子どもの身売りなどが増加するようになった。

カンダハルの子どもたち


 1985年3月、ゴルバチョフ書記長(当時)がアフガニスタン人民党(共産党)の自助努力を強調し、ソ連軍がアフガニスタンから撤退する意向であったにもかかわらず、米国は1986年からソ連軍と戦うムジャヒディンに対してスティンガー・ミサイルの供与を開始するなど軍事支援を強化していった。アフガニスタンで大量に蓄積された武器・弾薬が1990年代のアフガン内戦をいっそう悲惨にし、またタリバンはそれらの武器・弾薬の一部を用いて、米軍とも20年間戦った。アフガニスタンの人道危機をもたらした責任の一端は米国にもあることは明らかで、米国は中央政府の資産凍結を解除するなど、アフガン経済の苦境を軽減することが早急に求められている。日本政府もまた女子教育の再開をタリバンに強く求めるなど、アフガニスタンの人道危機を改善するためにタリバンとの対話を行ったらどうだろう。

カンダハルの仕立て屋さん

タリバンは武力だけでなく、行政能力で人心を掌握することを考えたほうがいいですね。当然考えているとは思いますが・・・。

米大使館近くで「解放」祝う 政権奪取1年でタリバン歓喜―アフガン
8月15日、カブールで、政権掌握1年を祝うアフガニスタンのイスラム主義組織タリバン戦闘員の車列(AFP時事)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022081500989&g=int

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