「石の上の種」と「賢い国」の日本 ―できることから始めよう

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 2019年11月9日文化放送の「大竹まことゴールデンラジオ」にゲスト出演した歌手の加藤登紀子さんは、若者からどのように生きたら良いかと尋ねられた中村哲医師が「人生は思った通りに行かない。例えば、石の上に種が落ちたとしましょう。風も吹かない。そうしたら石の上に根を張ることを考えましょう。自分がどこに一隅を得たのか考えて、そこで頑張るしかない」と答えたというエピソードを紹介している。
https://www.joqr.co.jp/qr/article/31094/

https://kagoshima-onkyo.rgr.jp/organized/6065/


 作家のなだいなださん(1929~2013年)は、この中村医師と同様のことを語っている。日本は単に平和憲法があるだけでは平和は守れないと述べ、中村医師の活動を評価して、「例えばアフガニスタンで井戸掘りのボランティアをしている人がいる。マングローブを植えている若者もいる。アフリカ奥地で働いている助産婦もいる。こういったことで世界とリンクしていく。自分は出来なくても、こうした人を支えること、応援することは出来る。そういうことを一つ一つしていくことが、護憲につながっていくのではないか」と述べているが、中村医師の「石の上の種」の話と重なるように思う。平和のために自分が置かれた一隅を照らし、できることからやりましょうと言っている。


 なださんは、「日本にかぎらず多くの国の政党が、「強い国を目指す」というスローガンを掲げて選挙を戦っているようです。せめて「賢い国になろう」をスローガンにできないのかと思う。人口が1000万とか500万の国が世界にはあります。そうした小国が強い国を志向しますか。たとえばスウェーデンやノルウェーやスイスが、強い国を目指しているかと、僕は言いたい。戦争の世紀は第二次世界大戦までで、今や21世紀になったのだから、賢い国をつくっていくべきでしょう。」と述べている。
http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20121211/1355159201

https://yunbok-diary.cocolog-nifty.com/…/06/post-20e0.html


 軍事が強い、あるいは経済力が一番あるからと言ってその国が評価されるわけではない。「強い日本を取り戻す」と言った日本の首相がいて、アメリカもトランプ大統領は「アメリカを再び偉大な国にする」と頻繁に口にしていた。しかし、そのようなトランプ大統領の姿勢はアメリカ以外の国の人が聞いたらしらけた思いになる。なださんが言う「賢い国」とは簡単に言ってしまえば、外国の人から見てよいイメージをもたれる国で、その国の人間ならば、危害を決して加えたくなくなるような国だ。なださんはスウェーデンやノルウェー、スイスなどを例に挙げてこれらの人口の決して多くない国が「強い国」を目指しますかと語っている。


 中東イスラム諸国に出かけ、日本人だと言うと、笑みを浮かべた人々から歓迎されるというのは、最高の安全保障のように思われてきた。暴力に遭うのは歴史的にも軍事力を背景に帝国主義的に力を誇示してきた国で、中東イスラム世界の側から見れば、具体的には英仏ロ、そして第二次世界大戦後にその輪の中に加わったアメリカだろう。中村医師は日章旗を車などに掲げることで安全が守られたと語っていた。


 冒頭のラジオ番組の中で加藤登紀子さんは中村医師の「物を持てば持つほど、金を持てば持つほど顔が暗くなる」という言葉も紹介している。これはイランのことわざ「屋根が広ければ、積もる雪も多い」に通じるものがある。力や金をもてばもつほど、その国のあり方も暗くなる。世界最大の軍事力、経済力をもつアメリカは第二次世界大戦後の戦争で失敗を繰り返し、また国内では途方もない貧富の格差が拡がる。日本が「賢い国」になるように微々たることでもしていきたい。

アイキャッチ画像はトビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムは、国際化が進む昨今、将来の日本を担うグローバル人材を育成すべく文部科学省が民間企業と協働して運営する留学促進キャンペーン。

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