『インドで考えたこと』 ―堀田善衛と沖縄、インドの平和の知恵

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Translation / 翻訳

 昨日は沖縄復帰の日だった。堀田善衛の『インドで考えたこと』(岩波新書)には、沖縄の戦後処理についてインドが対日講和条約で沖縄を含めた日本の全主権が恢復されるべきだと主張し、沖縄がアメリカの施政下に置かれることに激しく反発したことに関して次のように書かれている。


「私はインドで、ときどきオキナワはどうなっているか、と聞かれた。ウカツ者で健忘症なことにかけては人に劣らぬ私は、忘れてしまっていたのだ、アメリカの対日平和条約案と沖縄とインド政府との関係を。

 アメリカの条約案では、沖縄は日本から引き離され、国連の信託統治領に移されることになっていた。これに対して、日本の沖縄関係諸団体から、ワシントンの極東委員会に代表をもつ十数ヵ国に陳情書がおくられ、アメリカ案から沖縄条項の削除を申し入れた。これに応じてくれたのがインド政府であったのである。サンフランシスコ会議直前の一九五一年八月二十五日、インド政府は、日本本土と共通の歴史的背景をもつ島々で、侵略によって日本が奪取したものではない地域には日本の全主権が恢復されるべきである、と主張し、信託統治案の撤回を迫った。全主権の恢復をアメリカは拒否した。インドは会議出席を拒否した。」

さとうきび畑
https://www.yomitan-kankou.jp/tourist/watch/1611316380/?fbclid=IwAR2WWZx6Z0Rfr1aZy3gUYR8NclWh_JnT6JewPRLkJ–EhjSyH_oY72JjOq4


 同書の中ではまた「アジアを米英の支配から解放しようとしたかと思うと、戦後にはちゃっかりアメリカ体制に従属する。インドやビルマの人にはこれが理解し切れない。」と書かれている。沖縄の県民投票では辺野古移設反対が7割を超えたが、それでも政府は移設工事を強行した。民主主義の原理に反してまでもアメリカに追随する姿勢もインドやビルマをはじめ世界の人々には理解できないことだろう。今の日本政府の沖縄に対する姿勢は健忘症どころでなく、現在起きていることすらも、忘れているふりをしているようだ。


 同書では、詩聖タゴールが第一次世界大戦直後に日本に対して発した「道徳的盲目を愛国主義の儀式として、熱心に培養する国家は、突然の横死をもって存在を終わるだろう」という言葉を紹介している。タゴールの警告のように、日本は第二次世界大戦によって「横死」を遂げた状態になった。他国を犠牲にしてまでも愛国主義に訴えるプーチン大統領のロシアもいずれ「横死」状態になるだろう。


 タゴールは1924年に3度目の来日をした時、第一次世界大戦の時に対華21か条要求を出した日本の行動を西欧文明に毒されたものと批判し、満州事変以後の日本の武力に訴える膨張姿勢を日本の伝統美の感覚を自ら壊すものと形容した。

日本政府は核兵器禁止条約に反対しているが、ネルーの精神は大切だ
http://hiroshimapeacemedia.jp/…/jp/message/message002.html


 インドの初代首相ネルーは、1957年10月9日に広島の平和記念公園を訪れ、「原水爆禁止のみならず軍備縮小を進め、 恐怖心を排除し、お互いに信じ合い友情をもって楽しく暮らすこと のできる世界をつくってゆかねばならぬ」「われわれは水爆の発明によって一つの回答を求められている。 これは再び原水爆を悪用して人類を破滅させるか、愛と仏の教え、 慈悲の精神によって世界を作るかというものである。…私は“ヒロシマを学べ”と世界に訴える」と述べた。ネルーは周恩来とともに、1955年にインドネシアのバンドンで第1回アジア・アフリカ会議を主導し、領土保全及び主権の相互不干渉・相互不侵略・内政不干渉・平等互恵・平和的共存などを内容とする「平和十原則」を策定していた。広島市民は「世界の偉大な平和の使徒」としてネルーを迎え、およそ3万人が平和記念公園に集まった。
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/…/inpa50/8/970703.html


 ロシアのウクライナ侵攻があり、プーチン大統領は核兵器の使用をほのめかし、北朝鮮は核兵器を道具にアメリカと交渉しようとしている。国際社会は健忘症になることなくインドのネルーなどの平和十原則の精神を思い起こす必要があり、日本はアメリカに従属するのではなく、“ヒロシマに学び”核兵器廃絶について独自の理念やイニシアティブを発揮すべきだろう。

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