「人間の大地」を取り戻すことを訴えた犬養道子さん

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 メルマガでパキスタンのアフガン難民支援のために「みどり一本」運動を推進した犬養道子さんのことを書きました。https://miyataosamu.jp/planting-trees-japanese/ 植林は農地の砂漠化を防ぎ、アフガン難民や、また難民を受け入れるパキスタンの人々にとっても食の確保のために必要と考えられました。


 ヒューマンライツウォッチ日本代表の土井香苗さんは、高校時代に犬養道子さんの『人間の大地』を読んで、世界の不正義に怒りを覚えて難民の人権問題に目覚めたそうです。


「全世界の人口中の30パーセントつまり富む『北』のぜんぶの人間が、全世界の産する食べものの70パーセントをいかに値が釣り上げられようと買い込んでしまい(あげくのはてはその中の70億ドル分を手もつけぬまま棄ててしまい)、全世界の生産品の90パーセントを買ってしまう」。のこり70パーセント分を占める人々は、わずか30パーセントの食べものと、10パーセントの生産品で賄ってゆかねばならぬ。これは正義か。公正か。(『人間の大地』29頁)


 いまや世界の最も裕福な1%の人間が世界の富の半分以上を独占します。Robert Frank,”Richest 1% now owns half the world’s wealth,” CNBC, Nov.14, 2017


 飢餓の問題は犬養さんが「人間の大地」を書いた時点よりもさらに深刻になっているでしょう。2018年時点で、世界では飢餓に陥っている人が8億2,160もいると言われていますが、特に深刻なのはアフリカや、アフガニスタン、イエメンなど気候変動による干ばつや紛争に苦しむ国です。次世代によりよい社会を残すのは現在生きている者にとっては責務だと犬養さんは語っています。


 「目標はただひとつ。地球を-人間の唯一の大地を-ほんの少しでも、人間の住むに足る、ほんのちょっとでもいまより安全な、善いものにして、(あるいは、ほんのちょっとでも癒して)来るべき世代に引き継ぎ、人間の社会を、いまよりほんの少しでも、人間らしい、万人のための社会にする…共有のこの土地を死の脅威の場ではなく、万人の生存のための場とする…。(『人間の大地』444頁)


「何をおいても、食べさせよ。食を与えよ。まず、第一に、「自立(セルフヘルプ)して食べられる」 よう助け(ヘルプ)よ。(『人間の大地』179頁)

中村哲医師の緑化事業
http://pandora11.com/blog-entry-3280.html


 自立して食べられるよう助けよというのは、昨日紹介した中田正一氏や中村哲医師が目指したことでもありました。


「助けることは助けられること」「国際協力とは、供に生きること」―中田正一氏
「人びとと『ともに生きる』ことであり、それをとおして人間と自らを問うものであります。」―中村哲医師
 

 人間らしくいきるために地球に何をしていくか、先人たちの人生や言葉をかみしめながら考えたいものです。

道子氏の祖父・犬養毅
軍部には「恕」の心がなかった。恕には「他人の心情を察し、思いやる」という意味がある。
https://books.rakuten.co.jp/rb/15332277/
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