ダッカ事件とアルジェリアのパレスチナ支援 ―反植民地主義のリーダーとしてのアルジェリア

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Translation / 翻訳

 いまから46年前の1977年に142人の乗客と14人の乗員を乗せた日本航空パリ発東京行きの旅客機が日本赤軍5人によるハイジャックされた事件が発生し、バングラデシュのダッカに強行着陸し、日本国内にいる活動家6人が釈放され、身代金が支払われた。活動家の釈放との交換で人質も徐々に解放されて、旅客機は最終的にはアルジェリアに向かい、事件は一応の解決を見た。当時の活動家の釈放や身代金の支払いに応じた福田赳夫首相が「人の生命は地球より重い」と述べた言葉は、当時の流行語のようにもなったが、超法規的な措置に反発した法務大臣は辞任した。


 現在でもハイジャックの実行犯や釈放された活動家のうち5人は逃亡しているが、アルジェリアは日本赤軍のパレスチナ支援の活動に理解を示して、彼らを拘束することはなかったし、実行犯たちもアルジェリア政府の方針や、彼らに対する対応はあらかじめわかっていた。アルジェリアにはパレスチナ人たちに対する強い同情があり、アルジェリア政府もパレスチナ人に共感する日本赤軍の活動に理解を示していた。


 130年間のフランスの植民地主義支配を受けたアルジェリアは、同様にイスラエルの植民地主義の下で不自由で、経済的にも困難な生活を送るパレスチナ人の心情や、彼らが解放されたいという思いがよくわかる。昨年、7月5日の独立60周年の記念日でもアルジェリアの軍隊はパレスチナ旗をもって行進する兵士たちもいた。モロッコやスーダンのようにイスラエルと国交正常化を図る北アフリカのアラブの国もある一方で、アルジェリアはパレスチナ支援の姿勢を変えることなく、イスラエルとの正常化を断固拒否する姿勢をとり続けている。

映画「アルジェの戦い」
https://www.youtube.com/watch?v=j0Y3dXfdYFQ


 フランスはアルジェリアを支配するに際してローマ帝国の復活を唱え、アルジェリアが独立した時、フランスの植民者はアルジェリア全人口の9分の1を抱えていた。1960年代前半にヨーロッパ勢力によって支配されていたアラブの土地はアルジェリアとパレスチナだけであった(イスラエルを実質的に支配していたのは東欧出身のユダヤ人たち)。

1958年発行だそうです
https://www.kosho.or.jp/products/detail.php?product_id=329215764&fbclid=IwAR1gKNUSnQwEid1EuQ-l-JDiwr2T1CGTXosMyMNygOoi4KI3z6bZFTVU6pE


 ハイジャック作戦はアラブが後に多用することになるけれども最初に用いたのはイスラエルで、1954年にシリア航空機がイスラエルにハイジャックされ、イスラエルのリッダ国際空港に強制着陸され、シリアで拘束されているイスラエル人5人の釈放を求めた。この手法をフランスも真似て、1956年に独立運動を担っていたFLN(民族解放戦線)の指導者アフマド・ベンベッラなどを乗せた航空機をフランス軍がハイジャックして、彼らを1962年の独立まで釈放しなかった。


 パレスチナに移住したシオニストとは異なってアルジェリアのユダヤ人たちの中は、アルジェリアの独立を支援する者たちもいた。1956年にはFLNの指導者たちは、ユダヤ人がアルジェリア国家に属すという考えを示していた。反植民地主義の立場に立つアルジェリアのユダヤ人たちがこうしたFLNの指導者たちの声明を歓迎したことは言うまでもない。

パレスチナ人の自由がなければわれわれの自由も不完全だ
―ネルソン・マンデラ
https://www.youtube.com/watch?v=MoNdl0ft_Qg


 アルジェリアは独立後、ヨーロッパ植民地主義に抵抗するアフリカの運動に共感して、その支援に乗り出していった。南アフリカ、ナミビア、ローデシア、アンゴラ、モザンビークなどは白人支配に反発して独立を達成していった。アルジェリアの独立は植民地主義者たちに深刻な脅威を与えたと見られ、イスラエルのアリエル・シャロン元首相はイスラエル国家を維持するために、フランスとアルジェリアの闘争から教訓を得ようとして、アルジェリア独立戦争の歴史書『Savage War of Peace(平和のための野蛮な戦争)』を枕元に置いて愛読していたという。

アイキャッチ画像は

<あのころ>超法規的措置で6人釈放 ダッカ日航機乗っ取り事件
https://newspicks.com/news/1808997/

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