2016年6月に他界したボクシングの元世界ヘビー級チャンピンのモハメド・アリ氏は、2005年にイスラム神秘主義(スーフィズム)に帰依した。イスラムにおいて内面を重視する思想・運動のことをいう。内面を探究することによって真理に到達することを考える。
「(スーフィズムは)世の中の平和を力によってではなく,各人が心に平和を築くことを通して実現しようとする試みである.そこには仏教にきわめて近いものがあり、その意味で日本人には身近に親しみを感じさせるイスラムがある。(中村廣治郎氏の訳者解説[シャイフ・ハーレド・ベントゥネス『スーフィズム イスラムの心』(岩波書店)]

モハメド・アリの晩年の主張にはスーフィズムの思想がよく表れていた。2015年12月に共和党大統領候補指名争いを行っていたドナルド・トランプが米国内へのムスリム移民を禁止すべきだと説くと、アリは、米国の政治指導者はイスラムについて正しい理解に国民を導くべきだと説き、「イスラム」に名を借りた殺人がイスラムのイメージを歪曲していることに懸念をあらわにした。
アメリカのシカゴ在住のイスラムの聖職者サイイド・フサイン・シャーヒード師は、モハメド・アリのイスラムの寛容と慈愛を説く姿勢によって、彼はインドネシアからアフリカに至るイスラム世界全体から尊敬を集めていたと述べた。

エジプト
エル・ギザで
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モハメド・アリは2001年に911の同時多発テロが発生すると、「イスラムは平和の宗教であり、テロや殺人を奨励するものではまったくない。無辜の市民に危害を加えることは正当化されない。宗教は異なってもすべての宗教は真理を包摂するもものだ。」と述べた。

バーニー・サンダース上院議員は、モハメド・アリ他界の翌日、「アリはすぐれたボクサーだけでなく、市民の権利の擁護者であり、イスラムの真の信仰者である。」とイスラムの高邁な理想を体現した生き方をしたモハメド・アリを称賛した。
アイキャッチ画像は https://www.pinterest.jp/nippersecho/ali/ より
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