バンクシーと分離壁 -世界最大の平和へのアートは壁を壊す?

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 NHK「映像の世紀バタフライエフェクト 砂漠の英雄と百年の悲劇」 では、顔は写っていなかったものの、覆面アーティストのバンクシーがヨルダン川西岸にイスラエルが築いた分離壁にアートを描く様子が動画で紹介されていた。バンクシーは全長700キロに及ぶ分離壁は世界最大のアートに変えられると述べる。バンクシー自身は天使が壁をこじ開ける様子や「火炎瓶ではなく、花束を(Love in the Air)」などの作品を描いている。分離壁には世界中のアーティストたちが作品を描くようになり、大勢の観光客たちもそれを目当てに訪れるようになり、パレスチナ問題の矛盾を世界に訴えている。

 バンクシーは、2017年、パレスチナのヨルダン川西岸ベツレヘムにあるイスラエルが築いた分離壁の真ん前に「Walled Off Hotel(壁に遮られたホテル)」を開業した。その名前にもバンクシーのイスラエルの分離壁への強い風刺や批判が込められている。ホテルのロビーには、防毒マスクをつけた天使たち、催涙ガスに巻かれる男性の彫像などバンクシーの作品が展示されている。

Banksy ロンドンの国際観光見本市で パレスチナ分離壁のレプリカを展示!
https://theartofbanksy.jp/banksy-world-travel-market-excel-separation-wall/?fbclid=IwAR3czsv0UrEVZerchn9OCHdBU4JLIJCmUxBmcLEnYiAKj7DxI_S8gcFfUmg


 また、バンクシーの作品「地中海の眺め 2017年(Mediterranean Sea View 2017)」がイギリスのオークション「Sotheby’s」で2020年に、約2億5000万円で落札されたが、この収益は、ヨルダン川西岸ベツレヘムのBASR病院の脳卒中専門病棟と子どもたちのリハビリ施設の新設に寄付された。


 パレスチナ問題の原因をつくったイギリスの国民の一人として、2017年のバルフォア宣言100周年の日にヨルダン川西岸に「アポロジー(謝罪)パーティー」を企画し、エリザベス女王に扮した人物にイギリスの裏切りが対立を招いたことを謝罪させた。バルフォア宣言は、イギリス外相アーサー・バルフォアがシオニストたちにユダヤ人国家をパレスチナに建設することを約束したものだ。

バンクシー
「謝罪のパーティー」
イギリスのバルフォア宣言への謝罪をパレスチナ人にするエリザベス女王に扮した人
https://www.reuters.com/news/picture/at-west-bank-tea-party-artist-banksy-off-idUSKBN1D218N?fbclid=IwAR0aB7vqRer5opfX-bvijIJTSt_PEQy5-9MiclM97C6iRIZkmyrssVuVP4I


 イギリスがアラブの反乱を後押ししたのは「オスマン帝国を倒すためではなく、メソポタミアの小麦と米と石油を我が国のものとするためにである。私は祖国のために自分の誠実を捨ててしまった。(トーマス・E・ロレンス)」


 1972年のミュンヘン・オリンピックの際に、イスラエルの選手・コーチが犠牲になった立てこもり事件を起こした後、パレスチナ・コマンドの司令官は「我々の作戦がオリンピックに参加した青年たちの心を傷つけたとしたら謝る。だが、24年間も土地を占領され、自尊心を踏みにじられ、苦しみ続けている者のいることを思い起こしてほしい。なぜテロと脅迫によって占領を続けているイスラエルが参加を許され、我々の旗は会場のどこにもないないのか」と述べた。「自爆テロはジハードの最高レベルであり、私たちの信仰の深さの表れだ。爆撃者は聖なる戦士なのだ。」(パレスチナ・コマンドの司令官)

https://store.shopping.yahoo.co.jp/seiryu-shoten/you-bk10002-292950.html?fbclid=IwAR2jyNcbM4dwca5jy6kCe0_ogXIny1VnRbfdfk4EuBw1ZLvZ48dHrZ0kAi4


 著名な科学者のアインシュタインは、イスラエル初代首相のデヴィッド・ベングリオンによってイスラエルの大統領に就任することを要請されたことがある。アインシュタインは次のような言葉でそれを固辞した。


「イスラエルが最も重視すべきなのは、アラブ人に完全な平等を保障したいという願望を常に抱き、それを明確に表し続けることでなければなりません。アラブ人に対してどんな態度をとるかが民族としての私たちの道徳水準が試される本当の試金石になります。」


 イスラエルでは数次にわたるガザ攻撃を指揮したベンヤミン・ネタニヤフ首相が政権を掌握している。ネタニヤフ氏の「道徳的水準」は周知の通りだが、パレスチナ問題をつくったイギリスやイスラエルの後ろ盾であるアメリカの道徳的水準も試されている。


※各発言は「映像の世紀」より

アイキャッチ画像は分離壁をこじ開ける2人の天使 https://rabbanifoundation.org/a-journey-through-palestine-with-haya-omari/banksy-stencil-the-separation-wall-bethlehem-palestine/?fbclid=IwAR1I31CW1_D4ZWwt7fIaTlKKChKgKOnCzuhT4FsgjxeGr9brXmRPWIunCWk

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