沖縄「慰霊の日」と中東イスラム世界

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 23日、沖縄は「慰霊の日」を迎え、最後の激戦地となった沖縄本島南部の糸満市摩文仁の平和祈念公園で戦没者追悼式が開かれた。
 
 沖縄は第二次世界大戦の戦場となり、市民・戦闘員の死亡は20万人以上に上った。原爆ではない、地上戦でこれだけの死者が出たのだから、その沖縄戦の様子がまさに地獄図だったことは想像に難くない。さらに、沖縄は戦後、アメリカの施政下、つまり占領下に置かれた。1968年に返還前の沖縄の興南高校がベスト4まで進出した時、多くの日本人が声援したことを覚えている。甲子園で勝ち進む興南高校の選手たちに対して熱烈な拍手や歓声が送られた。その当時は沖縄の米軍基地がアメリカのベトナム戦争で重要な役割を果たしていた時期だった。日本人には占領下に置かれていた沖縄の人々に対する同情の想いが強くあった。

アマゾンより


 

 沖縄県平和祈念資料館の「むすびの言葉」には下のように書かれてある。

「沖縄戦の実相にふれるたびに

戦争というものは

これほど残忍で これほど汚辱にまみれたものはない

と思うのです

この なまなましい体験の前では

いかなる人でも

戦争を肯定し美化することは できないはずです (後略)」

 第二次世界大戦後の戦争否定の考えは、広島や長崎の原爆とともにまさにこの言葉が原点にあったように思う。

沖縄戦で。米兵から口糧をもらう老人。
http://rekishi-memo.net/worldwar2/battle_of_okinawa.html

 中東でも、悲惨な戦争や、暴力、占領を経験してきたイラク人、アフガニスタン人、シリア人、パレスチナ人たちの多くは、政治指導者たち、あるいはIS、タリバンのような武装集団のリーダーとは異なって平和や安定した暮らしを希求していることは間違いない。

沖縄で漆職人さんが一筆一筆ていねいに描いた 海の風景グラスの会(6回限定コレクション) | フェリシモ
https://www.pinterest.jp/pin/382594930817901797/

 イラク戦争を支持した小泉首相、川口順子外相(いずれも当時)などは、アメリカやイギリスが強調するイラクの大量破壊兵器の「脅威」にしか目が向いていなかった。イラクにはサダム・フセインの政治的判断とは何の関係のない、また何の罪もない、多くの市井の人々が暮らしていた。イラク開戦時に日本政府は沖縄県平和祈念資料館の「むすびの言葉」を考慮するどころか、戦争を支持した。小池百合子・東京都知事を含む「日本国際フォーラム緊急提言委員会有志」も「米国支持の旗幟を鮮明にせよ」とアピールを行い、米国の戦争と一体となることを主張した。

 イギリスでは、2016年7月6日、イラク戦争を検証する「イラク調査委員会」は、2003年3月の時点で、イラクのフセイン大統領から差し迫った脅威はなく、イラク参戦は不当だったと結論づけた。

 小泉氏や小池氏からは戦争を支持したことについて反省の弁はまったくなく、さらに安倍首相は大量破壊兵器をもっていないことを証明できなかったフセイン政権が「悪かった」という主張を繰り返している。そんな論理は世界的に大変恥ずかしく、沖縄戦の実相から何も学んでいない。

 冷戦後のアメリカの戦争は日本とは直接関係のないイラクなど中東や、アフガニスタン、パキスタンという南西アジアで行われてきたが、沖縄の基地は米軍が戦争に展開するのに好都合に機能してきた。
 日本国憲法9条では、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とあるが、しかし沖縄や日本の基地から米軍はベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン・イラク攻撃に出向いていった。特に、イラクやアフガニスタンでは沖縄の米空軍や海兵隊は戦闘、輸送、情報収集に従事した。国際保健機関(WHO)によれば、イラクでは戦争開始から3年間に15万人を超える市民が亡くなった。こうした日本国内の基地から行われる米軍の戦争行為は、「国際平和を誠実に希求する」という考えと相いれないものであることはいうまでもない。
『中東危機のなかの日本外交』(NHKブックス、2010年)より

インスタジェニックな絶景!宮古島の「砂山ビーチ」は沖縄一美しい海だった 7枚目の画像
https://www.pinterest.jp/pin/391250286361712377/


アイキャッチ画像は
番外篇:大田昌秀さんへの、さびしい最終便(鈴木耕)
https://maga9.jp/fujin170614/?fbclid=IwAR0XwfQVyKdzf-woyoqsmxBWwR5voMKjoDSGmXEOf8h43keox7XISAt3eI4

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