総統閣下と連携しようとしたシオニストたち -ナショナリズムを共通項に似通うナチズムとシオニズム、またロシア

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 ロシアのラブロフ外相がイタリア・メディアとのインタビューの中で「ヒトラーはユダヤ人だった」と発言したことに対してイスラエルのベネット首相などが強く反発している。ヒトラーにユダヤ人の血が流れているというというのはヒトラーが権力の座に就く可能性が高まる中で、彼の政敵らが意図的に流した中傷だった。

https://tezukaosamu.net/jp/manga/14.html


 ラブロフ外相は同時に「最も熱心な反セム(ユダヤ)主義者はユダヤ人だった」とも語っている。具体的にどのような事実や事例を指すかは定かではないが、ナチス・ドイツと協力したシオニストたち(ユダヤ人の国家をエルサレムに創ろうと考える人々)は存在した。
 アメリカのユダヤ人作家レニ・ブレンナーは、1983年に『独裁者たちの時代のシオニズム』を著したが、そのなかでハンガリーの「シオニスト救済委員会」の指導者だったルドルフ・キャスツナーがナチスに協力していたと書いている。キャスツナーは、1944年から1945年にかけて、ハンガリーのユダヤ人の将来のあり方についてナチスと交渉していた。
 ブレンナーは同書のなかで、ナチズムとシオニズムのイデオロギーの類似性が「協力」の背景としてあると述べている。ナチズムもシオニズムも、ナショナリズムを共通項として「血」と「土地」、つまり武力による領土の獲得を重視している。迫害された人々は、その迫害の記憶が鮮明に残り、彼らを抑圧した者の姿勢を自ずと身につける傾向があるが 、ユダヤ人は迫害の張本人たるナチスの姿勢、即ちナチズムを自ずと身につけてしまい、イデオロギー的な類似性をもってしまった。同様に、ナチス・ドイツの侵攻を受けたロシアも、ウクライナ戦争などを見ると、ナチスの侵略性を身につけてしまったように見える。 
 シオニズムの過激派組織「シュテルン・ギャング」は、パレスチナのイギリス委任統治当局に対するテロ活動をひたすら行い、イギリスよりもナチス・ドイツに親近感をもち、ナチスにユダヤ人のパレスチナへの移住を働きかけていた。創設者のアブラハム・シュテルン(1907~1942年)は、ユダヤ人至上の世界観をもつ民族主義的、また自らの考えを絶対とする全体主義的原理でパレスチナにユダヤ人国家を創設することを考えていた。
 イギリスの委任統治当局は「テロリスト」のシュテルンに懸賞金をかけ、シュテルンはスーツケースの中に寝袋を入れ、テルアビブの隠れ家から隠れ家を渡り歩いたが、1942年2月12日、イギリスの治安部隊によってアパートで殺害された。過激な傾向をもっていたシュテルンではあったが、イスラエルではシュテルンの記念日が設けられ、また1978年には彼の肖像画の切手も発行されるなど国民的な英雄とされている。
 しかし、科学者のアルベルト・アインシュタインは、1948年に「シュテルン・ギャング」などがデイル・ヤシンというパレスチナのアラブ人村で虐殺事件を起こすと、「ニューヨーク・タイムズ」紙に意見広告を出し、これらの組織のことを「ファシスト」と形容し、ナチス・ドイツがユダヤ人に対してしたことと同様なことを、これらの極右組織は行ったと非難した。

「シオニストたちがパレスチナ・アラブ人たちに対して、ナチス・ドイツがユダヤ人に対して行ったと同様なことをしているのを見るのは大変悲しい」ーアインシュタイン
https://quotesgram.com/einstein-quotes-about-israel/


 イスラエルは、ラブロフ外相の発言には反発したが、ロシアのウクライナ侵攻については強く非難することがなかった。ホロコーストの記憶を強く訴えるならば、ブチャなどにおけるロシアによるウクライナ人虐殺も非難しなければならないはずだが、シリアでロシアの暗黙の了解を得ながら、イランや、親イランのヒズボラの軍事関連施設を空爆し、また小麦輸入の50%をロシアに頼るなど、ロシアと決定的に対立したくない背景がある。

哲学者ジュディス・バトラー
「ガザを救え」
https://www.arabamericannews.com/…/the-quiet-rebellion…/

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