中村医師の言葉と生活に困窮するシリア人がロシアの傭兵になる ―ウクライナ戦争

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Translation / 翻訳

「三度の食事が得られること、自分のふるさとで家族仲良く暮らせること、この二つを叶えてやれば、戦はなくなると言います。私ではなくて、アフガニスタンの人々の言葉です。十人が十人、口をそろえて。」―中村哲医師


 ロシアがシリア人傭兵を募るようになり、プーチン大統領は昨年3月11日、16000人の中東出身者がウクライナで戦うと述べた。傭兵になろうとするシリアの人々は戦後復興がままならない中で生活手段がなく、家族を養わなければならない人々で、中村医師の言葉を借りれば三度の食事も得ることができないのだろう。シリアでは国民の80%が国際的な貧困ラインである一日1.90ドル以下の生活を送っている。(国連広報センター)

シリア人傭兵たち


 ISの「首都」であったシリア・ラッカは、かつては30万人の人々が住む都市だったが、気候変動による大干ばつや新型コロナウイルス、貧困、またISが戻ってくるかもしれないという不安や、犯罪者集団の活動、さらに市域の30%が破壊されたままで、昨年は生活苦から3000人の人々がトルコに移住していった。シリアの多くの人々が満足な食事を口にできない状態で、プーチンのロシアはシリア人の生活苦につけ込んで傭兵を募集している。プーチン大統領が月額200ドルから300ドルでシリア人傭兵を募集しているという記事もある。これが本当ならばシリア人の命もずいぶん安く値踏みされたものだと思ってしまう。
https://gazettengr.com/putin-pays-syrian-mercenaries-200…/


 シリアでロシア軍は空爆を繰り返し、都市を徹底的に破壊してから地上進攻する方法をとったが、それは1994年から96年にかけての第一次チェチェン紛争で地上軍を派遣し6000人という多大な犠牲を出したことへの反省から生まれた戦術だった。1999年夏に首相になったプーチンは第二次チェチェン紛争では、チェチェンに徹底的な空爆を繰り返して都市を破壊してから地上軍を送り込む戦術をとった。現在、プーチン大統領は市街戦の中でロシア兵の犠牲が増えれば自らの求心力が低下し、2024年の大統領選挙での再選も難しくなるため、シリア人傭兵の投入を考えているに違いない。

ロシアのウクライナ侵攻に反対するデモ行進=東京都港区で2022年3月5日午後1時24分、大西岳彦氏撮影
https://mainichi.jp/articles/20220307/k00/00m/030/240000c


 外国人を実戦に投入するのは19世紀後半から第一次世界大戦に至る過程で帝国主義諸国が好んで用いた手法だ。フランスは第一次世界で60万人の兵士をフランス植民地から動員し、「セネガル狙撃兵」と呼ばれる部隊には15,000人の兵士たちがいた。ロシアやソ連でも中央アジアの人々が強制的に徴兵された。第二次世界大戦中、たとえばキルギスでは、5万人のキルギス人兵士が亡くなったが、キルギスでは第一次世界大戦中にロシア帝国の強制的徴兵のやり方に対して反乱が起こったこともある。


 「平和な空気を吸って人間の食うもの食っていれば、それが天国」―水木しげる


 この言葉は食事もまったく不十分な中で太平洋戦争の激戦を生き延びた水木さんにとって切なる実感だったことだろう。


 アフガニスタンでは1980年代にアメリカやパキスタンが募ったアラブ人義勇兵たちがその後アメリカに対して牙をむくアルカイダになったように、ロシア軍のシリア人傭兵たちもチェチェンなどのムスリムの分離主義者たちと連帯して、ロシアにとって「因果応報」のように、ロシアやヨーロッパでもテロを行う可能性も否定できない。

迷信に惑わされないで
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