人の振り見て我が振り直せ ー欧米、日本への教訓

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 アメリカに続いてオーストラリアが北京オリンピックの外交的ボイコットを決定した。その理由はアメリカと同様にウイグル人弾圧などの中国の人権状況を問題にしてのものだ。中国のウイグル人に対する扱いは、100万人とも言われる人々を強制収容所に拘束し、中国共産党への忠誠を強制する政治・思想教育を行い、その民族浄化とも言える措置は強く非難されてしかるべきものだ。しかし、イラク戦争やアフガン戦争で無辜の市民を殺害したアメリカやオーストラリアが他国の人権状況を批判できるのものかと思ってしまう。

dressesofchinaさんのブログ『Dresses of clouds』より
ウイグルの民族衣装を着たウイグル人女性

 イラク戦争では50万人とも60万人とも見積もられるイラク人が犠牲になり、2004年11月のファルージャの戦闘では犠牲になった600人のイラク市民のうち半数が女性や子供たちであった(ブリタニカ)。また、アフガニスタンでもオーストラリアの特殊部隊が39人の民間人を殺害した戦争犯罪が昨年11月に明らかになった。

 自分の足元を見ず、自省を怠るのは私たち日本人も例外ではない。中村哲医師は、作家・澤地久枝氏との対談である『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』の中で次のように述べている。

いま、家内の里の大牟田というところにいますが、あそこには、何百人だか、何千人だか、強制連行で朝鮮人が連れてこられて、何百人も死んでいます。そのことは、もう皆、忘れてるんですね。拉致という行為そのものは国家的犯罪ですから、北朝鮮が悪くないなどとなどとはひと言も言いませんが、それ以上のことを日本はした。・・・自分の身は、針で刺されても飛び上がるけれども、相手の体は槍で突いても平気だという感覚、これがない限り駄目ですね。

中村哲医師

 このように、日本人はともすると、日本人のことにしか目が向かなくなってしまう「非国際性」があるようだ。同じく中村哲医師の言葉を評論家の斎藤美奈子さんが「週刊朝日」の2020年1月31日号で、中村医師の著書『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』を紹介する中で、次のように紹介している。

インタビューは伊藤和也さんが殺害された直後にも行われた。<実は、向うでの殉職者は六人目>だったが、アフガン人職員が殉職した際、日本側は何も言わなかった。引きあげろというが<現地の人の命はどうなる。殉職した五人の人権はどうなる>と抗議したかった。<ほかの国の人の命は考え切れない、その非国際性というのを感じます>

石原氏はその後辞任した。落選後、「勝負は時の運」と言っていたが、「不徳の致すところ」だろう。

砂が激しく吹き、 たとえ砂丘が形を変えても 砂は私たちの足跡(そくせき)を埋め尽くすことはないだろう
キャラバンが絶え間なく道を往き 馬がひどくやせ細ったとしても
私たちの子孫たち、私たちの偉大な子孫たちは 確かに見つけることだろう
この足跡をいつか 疑いもなく (拙訳)

アブドゥレヒム・オトキュル(ウイグルの詩人・作家:1923~1995年)

アイキャッチ画像は、BOLLY FAN『Dilraba Dilmurat』より
ディルラバ・ディルムラット(ウイグル人女優)

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