東京新聞の「日米開戦から80年」という特集で歴史家の保阪正康氏は「私たちの国は、残念ながら戦争を営業品目のようにしてしまいました。一等国になりたいがために、戦争を手段として使いました。その結果、すべてを失いました。戦争は国を滅ぼすと理解することが大事です。そして「戦争は嫌だ」という感情論ではなく、戦争とは何なのか、そのメカニズムを知って否定する必要があると思います。」と述べている。

日本はイギリス、フランス、ロシア、アメリカなどの欧米帝国主義諸国と伍していくことを考え、市場や原料調達先として欧米がすでに触手を伸ばしていた中国に割り込んで植民地進出を行った。その結果、先発の欧米帝国主義諸国と衝突し、結局太平洋戦争となって、310万人の日本人が亡くなり、保阪さんが言うように国を滅ぼすことになった。
現在の戦争のメカニズムも市場の獲得、維持が目的となっていることは間違いないだろう。その中でも軍需産業の経済活動の維持は最も重要なファクターだ。イラク戦争や、今の台湾海峡やウクライナの緊張も、紛争や緊張がなければ、営利活動が途絶えてしまう軍需産業の意向が反映されているに違いない。
米国の軍需産業は全州に工場をもち、議員たちに圧力をかけ、その営利活動にとって有利な政策をとらせるようにしている。米国などの軍産複合体の権益や活動の維持が戦争メカニズムの中心にあることを知れば、多くの人はなんと馬鹿らしい、不合理だと思えることだろう。アメリカの軍需産業や軍部(=軍産複合体)にとってデタラメな口実のイラク戦争は必要だった。

日本の軍需産業は、戦前は、まず官営軍事工廠(こうしょう)、そして官営八幡(やはた)製鉄を中心に発展して、それから三井・三菱(みつびし)・住友など財閥資本、さらに日産・日窒・日曹など新興財閥が国家の経済援助を受けて軍需部門を独占していった。これらの軍需産業が日本の戦争政策の決定に重大な影響を与え、そのために多くの日本国民が犠牲になった。戦前の財閥が戦争に絡んでいく様子は五味川純平の小説『戦争と人間』などでも描かれている。
中東の紛争は米欧の軍需産業の主要な利益獲得の場となっている。たとえば、ボーイング社とロッキード・マーティン社は、サウジアラビアのイエメン空爆で主要な「貢献」を行っている。サウジアラビア空軍の主力戦闘機はボーイング社のF15戦闘機だし、UAEはロッキード・マーティン社のF16戦闘機を用いてイエメンを空爆している。ボーイング社とロッキード・マーティン社にとって中東は、成長を続ける市場であり、2010年10月から2014年10月にかけての間、米国は900億ドルに相当する武器売却契約をサウジアラビアに対して行った。武器の売却こそが中東の安定に寄与するものであると、これらの軍需産業の重役たちは語ったが、ボーイング社のコーラー副社長は、F15のような戦闘機を売却すればその国とは30年にわたって保守点検や整備、訓練などで関係を築くことができると述べた。

https://caat.org.uk/…/stop…/caats-legal-challenge/
同じ東京新聞の特集で澤地久枝さんは「安倍(晋三元首相)さんの言うことを支持すれば、日本は憲法を変えて戦争できる国になる。戦争って遠くの出来事じゃない。日常的なことなんですよ。食べるものがなくなり、愛している人が殺される。それに耐えられますか? そう尋ねると、皆『嫌だ』と言いますね。」と語っている。戦争をしない国であり続けるには「戦争は嫌だ」という感情の共有も必要だと思っている。
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