求められるアフガニスタンの資産凍結解除 -アフガニスタンの深刻な人道危機

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アフガニスタンが人道上の危機にある。国連によれば、アフガニスタンでは人口の半分以上の2280万人が食料不足で危機的状況にあるという。

アメリカはアフガニスタンから撤退すると、アフガニスタンの海外資産を凍結してしまった。タリバンによってアメリカが支えていた体制が崩壊し、アメリカが軍事的に敗北する形で撤退することになったのがその理由だろう。しかし、タリバンの武装闘争やそのイデオロギーとアフガニスタン国民の健康とはまったく別次元のものだ。タリバンの女性に対する人権が問題になっているが、アフガニスタンは元々保守的伝統が強い国で、女性の姿を地方で見かけることはない。さらに、アフガニスタンで女性が働くのを見るのは首都のカブールを除いてほとんどない。

アフガニスタン|食料危機の深刻な影響を受ける母子を飢餓から救いたい
公益財団法人ジョイセフ
https://readyfor.jp/projects/joicfp2021

アメリカは世界で最も多くの制裁を科している国だが、その対象は2020年には777もあった。

アメリカ主導の経済制裁が人道上の危機を招いたのは、1990年代のイラクのサダム・フセイン政権に対してもあった。1994年1月9日付のニューヨーク・タイムズによれば、イラクでは40万人の人々が制裁の犠牲になり亡くなった。この記事によれば、その犠牲者の3分の1は5歳以下の子供たちであったそうで、さらに200万人が栄養失調のために病気にかかった。食べ物や医薬品はこの制裁から除外されるとされたが、イラクでは飢えや病気が広がっていった。イラクでは制裁で本来最も苦しむはずだったフセイン・ファミリーやその周辺が密輸ビジネスで最も利益を上げることになった。

イランは2015年に「イラン核合意」が成立し、2016年2月にはヨーロッパへの石油輸出を3年ぶりに再開した。2017年にはイランへの外国から直接投資は50%増加した。しかし、トランプ政権が核合意から離脱してイランに対する制裁を強化すると、イランの石油輸出は2018年初頭の日量250万バレルから現在では日量50万バレル前後にまで減っている。イランの通貨リヤールは80%も価値を下落させ、食品価格、住宅費が高騰し、失業率もうなぎ上りとなった。バイデン政権はイラン核合意に復帰し、対イラン制裁を解除すべきだろう。アメリカのイラン制裁は、イラン人の健康を大いに阻害することになっている。

アフガニスタンへの経済制裁の解除は至急求められている。アフガニスタンの経済危機は、国連やアメリカなどの諸国の経済制裁によって悪化し、アフガニスタン中央銀行と直接的な取引をしない各国政府や国際銀行機関の決定によって悪化している。アフガニスタンではハードカレンシーであるドルや現地通貨のアフガニーが著しく不足するようになった。教員の給与の支払いすら難しくなり、また冬季の燃料や食料を買うことも困難になっている。

アフガニスタンの干ばつ
https://www.afpbb.com/articles/-/3372663

経済制裁を科す政治家たちには制裁による飢えや病気に対する想像力が欠けている。アメリカをはじめ各国の政治指導者たちは、アフガニスタンの乾ききった大地の上で途方にくれている子供たちの姿を瞼に思い描いたらどうだろう。アフガニスタンを第二のイラクやイランにしてはならない。

写真出典:朝日新聞 2019年12月11日

アイキャッチ画像は https://www.tokyo-np.co.jp/article/18589 より

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