911から22年 ~変わらないアメリカの政策

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 今日で911の同時多発テロから22年だが、テロが発生する要因に変化がないように見える。
1998年2月23日付のオサマ・ビンラディンの声明は次のように述べている。


「湾岸戦争など米国のイスラム世界への介入の目的の背後には、経済的、宗教的要因のほかに、ユダヤ人の『小さな国家(イスラエル)』の利益に奉仕することがあり、エルサレムの占領や、パレスチナ人の殺害から目をそらす目的がある。それを最もよく証明しているのが、イラクを破壊しようとしていることであり(1990年代のイラクへの経済制裁など)、イラク、サウジアラビア、エジプト、スーダンを無力な弱小国家にしようとし、その不一致や非力さをイスラエルの生存のために利用し、米国は野蛮な十字軍的なアラビア半島への占領を継続しようとしている。」

アメリカの威信は崩れた
https://www.pinterest.jp/pin/76561262394092322/


 ビンラディンは、イスラムの三大聖地、メッカ、メディナ、エルサレムが占領されていることに憤っていた。アメリカは1990年から91年の湾岸危機・戦争にかけてメッカ、メディナがあるサウジアラビアに軍隊を駐留し、911事件後いったん軍隊を撤収させたものの、トランプ政権時代に「イラン脅威」に備えるために、リヤド南東にあるプリンス・スルタン基地に戦闘機やパトリオット・ミサイルを配備し、2500人ぐらいの人員が駐留するようになった。
(Jon Gambrell, “US exploring new bases in Saudi Arabia amid Iran tensions,” Military Times, January 27, 2021.)


 カタールのウデイド空軍基地はアフガン・イラク空爆に使用され、バーレーンには第5艦隊の基地があり、同様にアフガン・イラク戦争で重要な拠点となり、ホルムズ海峡に対するイランの「脅威」に対応する任務を負い、ビンラディンが反発したアメリカの中東への「軍事的占領」は継続している。

ロンドン
イラク戦争反対
https://ips-dc.org/february_15_2003_the_day_the_world_said_no_to_war/?fbclid=IwAR2zwmNUWUVUJF6Qhjix_S0I6MxoyoI7PplGkBfj5rmfOanFe_zlBsaZdmk


 また、イスラエルに対するアメリカの支援は揺るぎそうもないが、2020年11月16日、ワシントンDCアラブ・センターが発表した世論調査では、アメリカの対パレスチナ政策に81パーセントの人が反対している。アラブ諸国に対する脅威では89%の人々がイスラエルと回答し、またアメリカは81%だった。この世論調査は、アラブ13カ国で実際され、28,288人が回答したものだ。アラブ・イスラム世界のアメリカとイスラエルに対する否定的見解はこの20年間でもまったく変わらない。アメリカは軍事力で「民主主義」を中東イスラム世界にもたらそうとしたが、アラブ・ムスリムたちはこうした姿勢は民主主義の原理に反するものと見ている。


 ビンラディンが指摘したアメリカが中東イスラム世界に軍事介入する要因、イスラエルの利益の擁護、軍産複合体の利益には変わりがない。バイデン政権はイエメンを攻撃するサウジアラビアやUAEへの武器売却を見直すとしつつも、イスラエルには5月にイスラエルに対する7億3500万ドルの武器売却を認可した。これらの武器がガザ攻撃などに用いられることは間違いなく、そこでまたムスリムの血が流されることになる。

イラク・バグダッドで
反政府デモ
2020年2月
アメリカのイラク戦争でイラク人の生活はまったくよくならなかった
https://www.rudaw.net/english/middleeast/iraq/130220202


 過激派がテロを起こす要因には22年を経ても変化がないように見える。テロは「文明の衝突」ではなく、「政策の衝突」によって起こされている。アメリカなど欧米諸国に自省がない限りテロは継続していくことだろう。この認識も20年以上経っても変わっていない。

アイキャッチ画像は911テロ
ニューヨーク
https://www.nbcnews.com/news/us-news/9-11-firefighters-risk-serious-cardiovascular-issues-new-study-finds-n1050661?fbclid=IwAR1i40bOzDrdZKItcAEvCuCB1DQCnSis0GTar14xzhZXWHyk4FrI0Ks9nBk

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