トランプ前大統領が煽った「黒シャツ隊」の行動と中庸こそ平和・安寧への道

日本語記事
スポンサーリンク
Translation / 翻訳

 昨年10月28日未明、アメリカのナンシー・ペロシ下院議長のサンフランシスコの自宅に男が押し入り、夫のポール氏の頭部をハンマーで殴り頭蓋骨骨折という重傷を負わせた。男は「ナンシー・ペロシはどこだ?」と叫んでいたという。21年1月6日に米議事堂に押し入った集団も同様に下院議長執務室に侵入して「ナンシー・ペロシはどこだ?」と叫んでいた。


 ちなみに昨年10月28日はイタリアのファシストがローマ進軍をして、政権を掌握してからちょうど100年に当たる日だったが、昨年1月6日の議会襲撃と今回のペロシ議長宅の襲撃とは連続性と共通性があることは明らかだ。トランプ前大統領はペロシ議長のことを「クレイジー・ペロシ」と形容し、ペロシ議長が民主主義に対する戦争を繰り広げ、憲法への忠誠を破り、アメリカ国家を裏切ったなどとも表現した。昨年1月6日の暴力も、今回のそれもトランプ氏の扇動によって起こされていることは明らかで、トランプ氏はある意味アルカイダやISの指導者たちと同様にテロの教唆を行っている。

ムッソリーニ
https://www.pinterest.com.mx/pin/712905816003098757/


 トランプ氏の手法はナショナリズム、ポピュリズム、暴力を煽るという点ではムッソリーニのファシストと同様だ。トランプ氏は「アメリカを再び偉大にする」というナショナリスティックなスローガンに、ソーシャルメディアで大衆の関心や支持を獲得していった。ローマ進軍もムッソリーニはミラノにいて事態の推移を見守っていたが、これも21年1月6日はトランプ支持者たちが議会を襲撃したのと似ている。トランプ氏はホワイトハウスに隣接するエリプス広場で演説し、「ペンシルベニア大通りを歩いて行こう、私はペンシルベニア大通りが大好きだ、そして議事堂へ行こう」などと支持者たちを扇動する演説を行っていた。ムッソリーニの民兵組織「黒シャツ隊」は社会主義者や、ムッソリーニ個人の政敵に対する暴力を行使していった。この点でもペロシ議長など民主党の政治家たちに対する暴力を教唆するトランプ氏に似ている。


 他方で、環境活動家たちが名画にマッシュポテトなどを投げつけるなど、文化財に対する襲撃が相次いでいる。ガラスなどによって保護された作品をねらっているというが、ニュースに接していて決して快いものではない。24日にはロンドンのマダム・タッソーの蝋人形館のチャールズ国王の人形の顔にケーキを投げつけた。アフガニスタンやイエメンなどでは飢餓に瀕するおびただしい数の人々がいる中で食べ物を粗末にする示威行動には決して共感をもつことができない。


 トランプ氏も環境活動家の考えや行動も極端で、そこにはおのずと衝突や対立を招く必然性や背景がある。「イスラム過激派」と呼ばれる人々とも通底するものがある。イスラム神秘主義と日本では訳されるスーフィズムは、内面的な平和を個々の人々が築くことによって世の平和を達成することを目的として、中庸と寛容、愛を強調する。中庸と寛容の精神が世界の多数の人々が共有すれば、トランプ氏が扇動するような政治暴力、環境活動家たちのウクライナ戦争のようなことも起こらないだろう。
以下は愛と寛容の中庸を説くスーフィーの言葉である。


あなたの人間関係において、もしあなたがかりに横柄な人物に出会ったとしたら、理解と寛容を示しなさい。そしてもしあなたに害を与える人に出会ったら、寛大さで応えなさい・・・いつでも平和と調和の余地を残しておきなさい。(スラミー、1021年 没)


(スーフィーの言葉は、リアナ・トルファシュ(前筑波大学教授、筑波大学非常勤講師)「キリスト教とイスラーム間の宗教間対話 ――霊的道の役割――」より)

日本語記事
miyataosamuをフォローする
Follow by E-mail / ブログをメールでフォロー

If you want to follow this blog, enter your e-mail address and click the Follow button.
メールアドレスを入力してフォローすることで、新着記事のお知らせを受取れるようになります。

スポンサーリンク
宮田律の中東イスラム世界と日本、国際社会

コメント

タイトルとURLをコピーしました