ロシアの文豪トルストイと戦争、平和、イスラムの人々

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 ロシアの文豪トルストイ(レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ:1828~1910年)が戦争でイスラム地域と関わりをもったことはあまり知られていないのではないか。もちろん、トルストイ文学の愛好者だったら「常識」ともいえることなのかもしれない。トルストイはカフカス砲兵旅団に志願し、士官候補生としてロシア軍のチェチェン侵攻に参加した(1851~1853年)。彼は19世紀に下のような言葉を遺したが、それは彼のチェチェンでの戦争体験に基づくものだ。


「自己防衛の口実の下に(攻撃はいつも強国からひき起こされるにもかかわらず、あるいは野蛮な民族は文明化するという口実の下に(その野蛮な民族は文明化する者たちよりも比較にならないほどよい、平和な暮らしをしているというのに)、あるいは他の何らかの口実の下に、巨大軍事力の国家の召使どもは弱い民族にたいしてありとあらゆる悪事をおかす、彼らにはこうするより他に手がないとうそぶいて」


 現代に置き換えれば、米国がイラクやアフガニスタンに自由と民主主義を普及するという口実で戦争を行ったことを言い得ているかのようだ。米国がイスラム世界を後進的、理不尽と見なす「オリエンタリズム」的な発想が米国の「対テロ戦争」を招き、イラクやアフガニスタンの平和や社会的安定を著しく奪った。それに日本も、サマワへの陸上自衛隊の派遣や、インド洋での補給艦の活動で支援を行っている。
 トルストイは『ハジ・ムラート』(1904年)で、北カフカスの北カフカスのロシアへの抵抗運動の指導者ハジ・ムラートを人柄がよく、礼儀正しく、勇敢な人物として描いている。「ハジ(ハッジ)」という称号はメッカ(マッカ)巡礼を行った人につけられる称号である。

チェチェン
ケゼノムヤ湖
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 トルストイの平和主義は彼がオスマン帝国とのクリミア戦争(1853~56年)に将校として従軍し、悲惨な戦闘を体験したことによってさらに発展した。南アフリカで人種差別に対する抗議活動をしていた若きガンジーに宛てた書簡でトルストイは、「『無抵抗』と呼ばれていることは、愛の法則に他ならないということです。愛は人間の生活の最高にして唯一の法則であり、このことは誰でも心の奥底で感じていることです。私たちは子供の中にそれを一番明瞭に見出します。愛の法則はひとたび「抵抗」という名のもとでの暴力が認められると無価値となり、そこには権力という法則だけが存在します。」と語っている。
http://d.hatena.ne.jp/adlib/19100907

カフカスのプロフ
https://s.inyourpocket.com/gallery/131202.jpg


 1907年に日本の小説家の徳富蘆花(1868~1927年)がトルストイ宅に5日間滞在した時、トルストイは「土を耕し他の力に頼ることなく生活するものが国の力である。ロシアの国力は兵力ではない。その鍬(くわ)である。私がロシアを愛し、信じるのはそのためである」と話す。
 イスラムの人々が日本を称賛してきたのは、「日本の国力は軍事力ではない、その経済力・技術力である」という点においてだろう。

アイキャッチ画像はジョージアの伝統衣装
https://www.pinterest.jp/pin/432556739190834975/

ジョージアの踊り
https://www.caucasianchallenge.com/2014/07/discover-mountain-regions-caucasus/?fbclid=IwAR1YvyDs_QpshI6QUo0syJRK8VWReE0C4QCjVysA07kDPuWTO00hBEJhRIQ

アルメニア
タテブ僧院
https://guardianlv.com/2014/11/caucasus-vacation-three-countries-at-a-cultural-crossroads/?fbclid=IwAR1jGnMqMd3ZJ0e1hqzPueTF9tmr5WtBY4zmacnKZZFGXl1xm1kWCfCYV7s

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