筑紫哲也氏と中村哲医師が見た中東、アフガニスタン

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 2021年12月5日、東京新聞に「筑紫哲也さんの気概今こそ」という特集記事が掲載された。キャスターであったTBS「NEWS23」のDNA(モットー)は、「権力を監視すること」「少数派であることを恐れない」「多様な意見や立場をなるべく紹介して社会に自由の気風を保つ」だったのだそうだ。(最後のDNAが日本や世界から希薄になっているのは残念に思います。昨日あったフランスの極右指導者襲撃事件についてはメルマガに書きました。
https://miyataosamu.jp/zemmour-pope-francis/ )

アマゾンより


 あるベテランのジャーナリストから印象に残っている中東報道は何ですかという電話での問い合わせがあった。筑紫さんがテレビ朝日の「こちらデスク」という番組でイラン革命を取材して、その手記をまとめた『月刊プレイボーイ』(日本語版)の記事は記憶によく残っている。イラン革命成立をめぐっては、聖職者のホメイニ師の思想に焦点が当てられ、イスラムと政治の関係が報道の中心にあった時、筑紫さんはテヘラン南部の貧困街の様子を見て、食えないという不満が強くて、それが革命で倒れた王政への不満や怒りになったのではないかと分析していた。そういう視点で書かれたルポは当時ほとんどなく、当時学生であった私には大きな政治変動を見る際に参考になった。


 YouTubeで「アフガンの現実」(筑紫哲也NEWS23)という特集でイラク戦争開始直後のイラクと、米軍がすでに介入していたアフガニスタンの比較が行われていた。ゲストは中村哲医師だった。https://www.youtube.com/watch?v=ScGg075daxU

https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12380895093.htm より


 ブッシュ政権のパウエル国務長官は「ブッシュ大統領はアフガニスタンの人々を見捨てない」と語っていたが、パウエル氏の生真面目な発言とは裏腹にアフガニスタンの治安は日に日に悪化していった。
 アフガニスタン情勢を尋ねられた中村哲医師は、「現状が最悪なのは間違いない。パキスタンに逃れていた難民たちの帰還を促し、日に一人7ドルを与えても生活できずに、難民たちはまたパキスタンに逃れていくのです」と語っていた。中村医師は戦争以上に脅威になっているのは大干ばつだということを強調していた。99%のアフガン国民は、米国を後ろ盾とするカルザイ大統領に反感をもち、彼は米軍の護衛がなければ移動もままならないと中村医師は語っている。また、米軍が地方の軍閥に金や武器を与えていることがさらなる混乱を招き、米軍がいなくなれば、即座にカルザイ政権は崩壊するでしょうとも述べている。すでに2003年の時点で中村医師は、今年8月のカルザイ後継のガニ政権の崩壊を予想していたようだった。


 中村医師はタリバンのことを「一種の治安部隊」と形容し、タリバン統治時代の治安の良さを強調していた。アフガン復興支援会議で18億ドルの支援が約束されても支援金はアフガニスタン政府の行政には実際には届かず、本当に求められているのは人々が食えるような支援、アフガニスタン全人口の9割を占めるの農民、遊牧民が自立できるような支援だということを強調していた。
 また、イラクの占領政策を、日本をモデルにするとアメリカが語るのは失礼とも中村医師は語り、日本の復興はアメリカの占領で実現したものではなくて、日本人の努力がもたらしたものであることを強調していた。


 中村医師は「イラクの未来はヤバイ、絶望的」と最後に述べたが、その通りになった。中村医師を招いてイラクの将来を占うというのは、ゲストとしてアメリカの占領政策の破たんを見ている人に語ってもらい、他国に露骨な介入を行うアメリカの権力の濫用を、メディアを通して訴えたいという筑紫氏の意図があったのだろう。きわめて説得力のある中東情勢の解説のように思われた。
アイキャッチ画像はhttps://www.facebook.com/watch/?v=2570377019852662

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