昨年亡くなった漫画家さいとう・たかを氏はイラン革命の指導者ホメイニ師は偽物だと『ゴルゴ13』の中で書いたらイラン政府関係者から抗議がきたこともあったそうで、いかに広く読まれているかがうかがえるエピソードだ。

https://rubese.net/twisoq001/index_trend.php?id=219623
『ゴルゴ13』は同時代の国際情勢を伝える内容ともなっているが、現代中東についても本質的な問題について切り込んでいる。昨年1月17日付の「じんぶん堂」で拙著『黒い同盟 米国、サウジアラビア、イスラエル』(平凡社新書)が紹介されているが、その中でも『ゴルゴ13』について触れられている。
https://book.asahi.com/jinbun/article/13033976
紹介されているのは、米国レーガン政権時代の米国・サウジアラビア関係だが、ザルマン王子(架空の人物だが)の発言として「我が国が昨年、米国政府より購入した兵器の総数は55億ドル! 他を圧する世界一の購入国であります! その半分を、フランス、西ドイツにふり向けると通告しただけでレーガンの首は危うくなります……。」というものがあった。この構造は現在でも変化なく継続し、軍部と軍需産業の結合体である軍産複合体が戦争をやめられない背景になっている。米国の「対テロ戦争」は莫大な利益を軍需産業にもたらした。


昨年9月に自民党総裁選があったが、さいとうさんは「歴史劇画 大宰相」で戦後の日本の首相たちを「三角大福中」時代まで描いている。「三角大福中」で日本の中東政策に多大な影響を与えたのは田中角栄政権であり、第4次中東戦争に起因する石油危機を背景にアラブ寄りに舵を切った。日本はパレスチナの民族自決権を認め、パレスチナ国家の成立に支援を与えた。日本政府はその後もイスラエルの入植地拡大を非難し、パレスチナ問題の二国家解決を訴えている。


岸田文雄氏首相は日本イラン議員友好連盟の会長を務めた人だが、イラン大使館でイラン映画の上映会を開く際に、日本イラン議員友好連盟に声をかけたが、岸田氏は米国とイランの緊張を理由に出席しないことを伝えてきて、それに他の議員たちも倣った。主催者とすれば、米国・イランが緊張している時こそ、イランへの理解を深めてほしいという思いだった。この胆力のなさが岸田氏の特徴だとすれば、あまり期待することはできないという思いでいる。森友・加計問題の追及についても言葉を濁している。
岸田氏は、少なくとも日中国交正常化を実現し、パレスチナの民族自決権を承認した田中角栄のような猪突猛進型ではないことは間違いなく、総裁選の結果から自民党の意思決定は菅内閣の成立と同様に、国民の声を聴くものではないという印象をあらためてもった。
アイキャッチ画像はさいとう・たかをさん
日経新聞より
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