「人間の歴史は 虐げられた者の勝利を 忍耐づよく待っている」-タゴール

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Translation / 翻訳

 ノーベル文学賞を受賞したインドの詩人タゴール(1861~1941年)は、アジアは文化によって一つでなければならないと説き、かつてアジアは仏教文化によって一つにまとまっていたと語った。仏教は人間の貴賤はインドのカースト制度のように、生まれながらのものではなく、その行為によって決められると考える。


 タゴールが否定したイギリス植民地主義は、ミャンマーの仏教とロヒンギャ族の間に払拭しえない亀裂をもたらした。イギリスは1824年から1826年にかけてのミャンマーの西部アラカン(現在のラカイン州に当たる地域)遠征でインドのベンガル人のこの地域への移住を促進させた。

マレーシア
クアラルンプールで
祈るロヒンギャ難民
https://www.newsweek.com/myanmar-crimes-against-humanity-rohingya-persecution-says-amnesty-533519?fbclid=IwAR3ReC1lfhmkv4hSuBHkdQTtxqs2J0_XfzxdkRrkksFFse0HW9Zuz8KLaZo


 「ロヒンギャ」という言葉はミャンマーのラカイン州に居住するムスリムたちを指す言葉だ。ロヒンギャの指導者たちは彼らの歴史は7世紀まで遡ると主張するが、仏教徒は「ロヒンギャ」という言葉自体を使わずに、ラカイン州のムスリムのことを「ベンガリー(ベンガル人)」と呼称している。2014年に実施された国勢調査でもミャンマー政府は「ベンガリー」というアイデンティティを自ら認めたものだけを国勢調査の統計に含めることにした。


 20世紀の初めまでにイギリスがラカイン州に送り込んだムスリムの数は元々住んでいたムスリム人口の倍もあった。外見、衣服が仏教徒とは異なる多くの移民たちは、仏教徒住民たちをラカイン州南部に追いやることになり、一部の仏教徒の村落全体が難民化することもあった。ラカイン州の資源をめぐってムスリムと仏教徒が競合するようになったが、第二次世界大戦でロヒンギャはイギリス軍に、仏教徒は日本軍に協力した。イギリスは戦後州行政の重要なポストにロヒンギャの人々をつけることになったが、一部のロヒンギャもイギリスが彼らに自治を認めたと考えるようになった。1946年にムスリムの政治指導者たちは独立国家樹立を志向し、パキスタン建国の父となるジンナーとも会談するようになった。


 しかし、1948年にミャンマーが独立すると、イギリス植民地時代とは違ってロヒンギャはミャンマーの仏教ナショナリズムの台頭とともに、次第に抑圧されていくことになる。1962年のクーデターでミャンマーのムスリムたちは隣国で、イスラムの国であるバングラデシュに難民として逃れていった。1982年の国籍法でもロヒンギャには市民権が与えられることはなく、1980年代からミャンマー政府はラカイン州ではロヒンギャを追放して、仏教徒を定住させる政策を採っていった。現在、ロヒンギャの人々は教育、雇用、公衆衛生、住宅、宗教活動などの分野で様々な差別を受け、「民族浄化」と呼ばれる状態が継続している。

ロヒンギャの子供
https://www.newsweek.com/aung-san-suu-kyi-denies-ethnic-cleansing-rohingya-muslim-minority-579788?fbclid=IwAR0lCWcyxg0RcJHofUc4HrCVN2fZvqWj2oBxcFoBKMmCcXLvcWr7r66YyGQ


 ロヒンギャの問題は南アジアにおけるイギリス植民地主義支配に歴史的背景があるが、ミャンマーの仏教徒たちは狭量なナショナリズムを排してミャンマー人としてロヒンギャの人々を扱い、その行いによって高貴な仏教徒であることを示したらどうだろうか。ミャンマーのロヒンギャ排斥は仏教思想によって行われているわけではないが(この点では「イスラム過激派」現象と通底するが)、仏教への見方も変えかねないものであることは間違いないだろう。
アイキャッチ画像は事実はあまたあるが、真実は一つである -タゴール
https://i.pinimg.com/736x/ee/43/8a/ee438ae9d49a06631cf3b569723275ba–tagore-quotes-rabindranath-tagore.jpg?fbclid=IwAR0Oi9l8TNqHhYvx8s2Vek8cSpgkfnjv-GMAMS4FuRlhkZUu7mb4JEp31y0

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