戦争への抵抗ールイ・アラゴン「幸せな愛などない」

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Translation / 翻訳

 平和こそが 戦争犯罪人を膝まずかせ
 自白するように 余儀なくさせる
 そして犠牲者たちとともに 叫ぶのだ
 戦争をやめろ   
 ―ルイ・アラゴン(フランスの作家・詩人:1897~1982年)「平和の歌」より
 http://oshimahakkou.blog44.fc2.com/blog-entry-1617.html


 反核兵器の詩「にんげんをかえせ」で有名な峠三吉氏は、ルイ・アラゴンの「髪にそよぐ風のように生き、燃えつくした炎のように死ぬ」という詩の一節をこよなく愛していたという。


 アラゴンは、1942年11月にムッソリーニのイタリア軍が南仏のニースに侵攻すると、妻のエルザと離れて暮らすことを考えるようになる。当時のフランスのレジスタンス運動には、夫婦であろうと、恋人同士であろうと、二人で同居してはならないという規則があった。二人で同居していれば、警察につけられる可能性が高まり、レジスタンス運動を危険に陥れると考えられたからだ。そのような時にアラゴンは「幸せな愛などない」を作詞したが、これは日本人歌手によっても歌われる有名なシャンソンだ。


〔幸せな愛などない〕
人間にたしかなものとては何もない その強さも 
弱さも心さえも 腕をひらいて友を迎えたと
思うとき その影は十字架のかたちをしている
幸福を抱きしめたと思う時 ひとは幸福をぶち壊す
人生とは痛苦にみちみちた無常な別れだ
幸福な愛はない
(日本語の歌は https://www.youtube.com/watch?v=kkJJg3JQPU8 などにある)


 アラゴンたちをニースから追いやることになったムッソリーニは、イタリアのファシズムの指導者で、ムッソリーニは古代ローマを賞賛するとともに、学校ではローマの歴史教育を重視させた。ファシズムは自民族(人種)が他のそれよりも優れていることを喧伝したが、
 ファシズム体制においては、女性は妻と母親として国家のために多くの子どもたちを産むことが奨励され、ムッソリーニは、女性が家庭外の職に就くことを厳格に制限した。ナチスは女性の党員が男性党員に指示を出すことを禁じた。


 ナチス・ドイツはユダヤ人を排除、迫害したし、それと同盟したムッソリーニも熱烈な反ユダヤ主義者だった。ファシズムは特に軍事力を重んじ、帝国主義的発想に立ち、ナチス・ドイツは「東方への衝動」( Drang nach Osten)を唱え、スラヴ地域にドイツの勢力を拡大することを目指した。ムッソリーニは古代ローマ帝国の栄光を復活させようとし、アフリカのエチオピア併合などの侵略を行った。


 プーチン大統領はロシア正教会のキリル総主教と連帯し、ロシア語の使用とロシア正教会を信仰する世界(ルースキー・ミール)を拡大しようとしている。ムッソリーニのローマ帝国の復活やナチス・ドイツの「東方への衝動」と同様な発想だ。他方、米国など米欧諸国はウクライナに武器供与一辺倒の姿勢しかないように見える。

 世界史の過ちを繰り返さないためには国際社会は過去の失敗をあらためて意識し、プーチン大統領のウクライナ侵攻に見られる新たなファシズム現象や戦争の継続に対して「NO」の声を上げ続けるべきだ。

アイキャッチ画像はルイ・アラゴン(ウィキペディアより)

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