水木しげるさんを支えた「非戦」への情熱

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 2015」年11月30日に亡くなった水木しげるさんの1周忌を前にして、妻の布枝さんが2016年11月24日の「朝日新聞」夕刊に「『ゲゲゲ』支えた非戦と情熱」と題するインタビュー記事で、水木さんの回想を語っている。水木さんが作品で伝えてきたことは何かという問いに答えて、「『人間って何てばかなんだろうな。短い人生に狭い地球でこれだけ殺し合いをしたりすることは、本当に愚かなことだ』と描かんとしていたと感じます。」と述べている。

睡眠のチカラ 水木しげる「眠っている時間分だけ長生きするんです」
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 水木さんの自伝的な『コミック昭和史』を読むと、最前線で戦い、戦闘で片腕を失うなど戦争を生き抜いたことが奇跡だと思えてくる。戦後の水木さんの膨大な業績を考えるとやはり生きていてよかっただろうと思える。水木さんの同世代の若者たちの多くは、その後、才能を活かす機会もなく戦場に散っていった。


 人気のあった妖怪漫画に加えて、戦記ものが得意で、アジア太平洋戦争については精緻な画風で、多くの力作、労作を遺した。


 『コミック 昭和史』の中で戦死3万人を出したインパール作戦については「補給の問題を軽視し、最上層指揮官の個人的名誉欲が一般将兵の大量の命を犠牲にするという旧日本軍特有の欠陥をもっていた」と形容されている。そこには、この無謀な作戦を立案、指示した軍上層部への怒りが込められているように思われた。

鳥取県でくつろぐ鬼太郎一家
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 水木氏の「平和な空気を吸って人間の食うもの食っていれば、それが天国」という言葉は、人間社会の理想を語っているように思う。私たち日本人は、戦禍が続く中東イスラム世界に比べれば、まがりなりにも「天国」を享受してきた。「天国」ではなかった軍隊生活における飢餓も『昭和史』の中でしばしば描かれている。意地の悪い古兵、いったん全滅が伝えられると生還が許されない将兵たち、マラリアなどの疾病、重労働など、アジア太平洋戦争の不合理ぶりが切々と訴えられている。勇ましいことを言う人は戦争を知らないからだとも述べられ、日本のタカ派の主張にも釘を差した。


 水木氏の一生やその作品は、現在の日本人の将来に対する教訓そのものだ。無責任な政治家や軍人の判断の下で苦しむのはいつでも、どこでも民(たみ)である。水木氏が遺した「教訓」をつないでいきたい。
水木しげるの「水木プロ」が調布パルコ25周年をお祝い、鬼太郎登場のビジュアル制作
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ねずみ湯
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