「どうしても生まれ変わらなければならないのなら、いっそ深い海の底の貝にでも…そうだ貝がいい。貝だったら深い海の底でへばりついていればいいからなんの心配もありません。深い海の底だったら戦争もない、兵隊に取られることも無い。房枝や賢一のことを心配することもない。どうしても生まれ変わらなければならないなら、私は貝になりたい。」-橋本忍脚本ドラマ「私は貝になりたい」より
脚本家の橋本忍氏は、黒澤明監督の一連の映画作品には欠かせない存在だった。「ある生きものの記録」は、核兵器の恐怖から逃れるために、ブラジル移住を考え、全財産を投げ出そうする主人公の男が家族から「準禁治産者」として訴えられるというストーリーで、「死ぬのはやむを得んが、だが殺されるのは嫌だ」というセリフが強調されていた。

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ともに現代の戦争や核の理不尽ぶりを描いた作品だったが、「私は貝になりたい」は戦争犯罪が敗者にばかり適用されるという深刻な不合理を描いていた。力のある者には戦争犯罪は適用されないのは、パレスチナのガザ境界で3月30日に始まった「帰還のための大行進」で130人以上のパレスチナ人が犠牲になったが、武装していないパレスチナ人を銃撃するイスラエル軍兵士の戦争犯罪は問われないことにも見られる。パレスチナ人たちも「殺されるのは嫌だ」と思っていることは明白である。
南アフリカのネルソン・マンデラ生誕100年記念講演で、アメリカのオバマ前大統領は、「恐怖と怒りの政治」を手段にする政治家たちが「ほんの数年前には想像もできなかった速さで増えている」と指摘したが(BBCの記事)、その「先駆」であるのはイスラエルのネタニヤフ元首相だった。
2018年7月、イスラエル国会は、同国が「ユダヤ人の民族的郷土」と規定し、東西エルサレムをイスラエルの首都とする法案を可決した。イスラエル国内には20%のアラブ系市民がおり、ヘブライ語を国語としたことは、イスラエルが公式にアラブ人を「二級市民」とするアパルトヘイト国家になったことを明らかにした。それはあたかもアメリカが白人のクリスチャンの国家であることを宣言し、アフリカ系やヒスパニック系の人々を排除して、英語を唯一の公式言語とするようなものだ。

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かつてイスラエルを構成するユダヤ人たちはヨーロッパ・キリスト教世界で「二級市民」として扱われていたが、同じ「人道上の罪」をアラブ人に対して行っている。2002年に発効した「国際刑事裁判所ローマ規程」ではアパルトヘイトを「人道に対する罪」と規定した。
南アフリカでオバマ元米大統領は、「信じ続けること、前進し続けること、築き続けること、声を上げ続けること。世代は皆それぞれ世界を刷新する機会が与えられている」と演説を締めくくったことがあるが、世界はイスラエルのアパルトヘイトを根絶するために声を上げ続けなければならない。
アイキャッチ画像は
http://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d0658/ より
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