サクラダ・ファミリア ~各宗教の宥和と平和のシンボル~マリアは命を与え、命を守り、命に寄り添います

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 スペイン・バルセロナにあるサクラダ・ファミリアは1882年に着工し、現在でも建設が進行中で、スペイン内戦、資金不足、コロナ禍など様々な障害がありながらも140年にわたって建設が行われている。21年12月に尖端に星のライトニングが輝くマリアの塔が完成した。


 サクラダ・ファミリアの設計を行った建築家のアントニ・ガウディ(1852~1926年)は「人の一生を天秤にかけてみれば喜びよりも苦しみの方が多いことは明らかだ」と語ったことが紹介されていた。サクラダ・ファミリアは困難にある人々に希望を与えたいというガウディの想いが表現されている。番組の中では「ガウディに伝えたい。私たちをつなぎ希望をもって毎日を過ごせる素晴らしい教会を本当に有り難う」という教会関係者の発言があった。

サクラダ・ファミリア内部
https://www.tiqets.com/ja/barcelona-attractions-c66342/tickets-for-sagrada-familia-guided-tour-in-italian-p1014572/?fbclid=IwAR2lLvi76_9N3GOhCDVBoeijHafQsAFNzvMyMykhfAV9FexUT0mVsT4RGkE


 バルセロナがあるスペイン・カタルーニャ州もまたキリスト教とイスラムの文化が交わったところだった。


 オーリヤックのジェルベール(940頃~1003年)は、フランス中南部オーベルニュ地方オーリャックで生まれた。後にフランス人として初めて教皇(シルウェステル2世、在位999~1003年)になる人物で、カタルーニャ地方で、アラブの諸学を吸収し、それらを多くの弟子たちに伝えた。
 ジェルベールは、アラビア語の学習によって獲得した数学や天文学などアラビア科学の知識をフランス北部のランス大聖堂の学校などで教育者としてヨーロッパに伝達し、また神聖ローマ帝国のオットー3世(在位983~1002年)に政治的アドバイスを行うなど、10世紀後半のヨーロッパ科学の発展にとって特筆すべき人物となった。


 アラブ人たちはインドからゼロの概念を採りいれ、現在我々が使用する0、1、2、3、4、5・・・などの数字はアラブ人がインドから採りいれたもので、ローマ数字や漢数字と違って0記号があることでアラブ世界では数学が発展していった。ジェルベールが紹介した0の使用によってヨーロッパでも同様に数学の進化が見られた。


 サクラダ・ファミリアの「生誕のファサード」には「希望」「慈悲」「信仰」の門がある。このような宗教的観念、価値観はイスラム、あるいは仏教にもある。イスラム神秘主義詩人のルーミー(1207~1273年)の「すべての宗教は、同じ一つの歌を歌っている。相違は幻想と空虚に過ぎない。」という言葉を改めて思い起こさせるものだ。野ばらで信仰心を表したり、ナシ、モモ、スモモ、サクランボで人の熟した魂を表現したりするのは、イスラム世界の文様であるアラベスクを連想させていた。「アラベスク」はヨーロッパ諸言語で「アラビア風」を意味する言葉であり、イスラム美術の装飾文様一般を指す。狭義には装飾化された植物文様のことであり、ギリシア・ローマ文化美術やササン朝ペルシアの文化に起源をもつとされ、11世紀以降になってアンダルス(イスラム・スペイン)から中央アジアまでイスラム地域で広く見られた(平凡社『イスラム百科』より)。


 イスラムの聖典コーラン(クルアーン)の中でマリア(アラビア語ではマルヤム)は、「マリアよ、神はおまえを選び、おまえを浄(きよ)め、おまえを選んで世のすべての女の上に置きたもうた。」(3章42節)とマリアが最高の女性という高い評価を与えている。また、イエス・キリストはコーランに「イーサー」という名前で登場するイスラムの預言者の一人でもあり、イスラムでも高い尊敬を受ける人物だ。


 番組の最後の方で「すべての母と同じように私は命を与え、命を守り、命に寄り添います。」というマリアの言葉が紹介され、マリアは命を奪う戦争とは対極にいることが強調されていた。サクラダ・ファミリアは各宗教の共存のシンボルであると同時に、戦争のある時代に世界に平和を呼びかける「灯台」のような存在でもある。

アイキャッチ画像はサクラダ・ファミリア
マリアの塔
https://www.reddit.com/r/evilbuildings/comments/rmvcq1/the_ninth_and_now_tallest_tower_of_the_sagrada/

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