ロシアがウクライナに侵攻? -独裁者の常套手段

クリミア・タタールの民族衣装日本語記事
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 ロシアがウクライナ東部に17万5000人の兵力を結集し、来年初めに侵攻作戦を開始することも考えられるという。嫌な事態である。ロシア軍のウクライナ国境への集結は、ウクライナがNATOに加盟することを警戒し、それをけん制する目的もあるのだろう。2014年3月にロシアはクリミア半島を併合したが、その後もロシアとウクライナの戦闘は続き、2015年2月に両国の間では停戦合意が成立したものの、停戦合意後も1万4000人が犠牲になったと見積もられている。

衛星写真 ウクライナ国境に集結するロシア軍
CNN「Russian forces are massing on Ukraine’s border. Bluff or not, Putin is playing with fire
対ウクライナ国境に集結するロシア軍(衛星写真)

 プーチン大統領は国民の間の求心力を維持するために、ナショナリズムに訴えてきた。ウクライナのクリミア半島の併合を行い、またシリアやリビアへの介入などアメリカのトランプ前政権が国際的に孤立する中で、地政学的影響を拡大してきた。領土は、国民の愛国心に訴えるのに、極めて有効なツールだ。ロシアの改正憲法には、領土割譲を禁止する項目も含まれ、さっそく国後島ではこれを記念する碑が建てられ、北方領土を返還しないことが強調された。

 今回のウクライナとの緊張もまた国内の危機を多い隠す目的があるかもしれない。ロシアではプーチン大統領への支持が低下し、コロナウイルス感染者が増加して、政府は国産ワクチンのスプートニクVを軍人たちに接種を強制したが、それでも接種率は30%と進んでいない。国内で弾圧政治を進めているが、それを正当化するために、今回のウクライナ危機のように、西側との対決姿勢を強めている様子だ。石油や天然ガスに依存する経済も持続的発展に結びついていない。

 プーチン大統領は、クリミア半島併合に見られるように、ロシアの国益を最優先させ、日本への譲歩も経済協力などでよほどのうまみがない限り乗ってこないだろう。シリアへの介入など勢力圏の拡大を図るプーチン大統領のロシアは、中国と同様に日本にとって厄介な近隣諸国であることは間違いなく、日本は賢明な外交を行っていくしかないだろう。

ロシアはタリバンが政権掌握後のアフガニスタンに対しても人道支援を行うようになった。2003年にロシア最高裁がタリバンを「テロ組織」に認定したが、プーチン大統領は「テロ組織」認定を緩める用意があることを明らかにしている。ロシアにとってはアフガニスタンで敵対勢力が政治の実権を掌握すると、ロシアの南方に安全保障上の重大な脅威が存在することになり、アフガニスタンで活動する中央アジア出身の過激派が中央アジア諸国やロシアに侵入してこないためにも、タリバン政権との協力関係をロシアは視野に入れなければならない。

ヒトラーは「この土地は自然によってもともと特定の民族が将来利用するためにとっておかれたのではなく、それを獲得する力を持つ民族のため、そして懸命に開拓するための土地である。」と述べたが、クリミア半島を併合し、日本の北方領土を返還しないプーチン大統領の領土に関する思いもヒトラーと同様なものがあろうが、プーチン大統領は対外的な危機をつくることによって国内の引き締めを図り、自らの求心力を維持したいのだろう。その結果、犠牲になるのは、ロシア国民やウクライナ国民であることは言うまでもない。

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