トルコ・シリア大震災が発生すると、ロシアのプーチン大統領はトルコのエルドアン大統領、シリアのアサド大統領に犠牲者に対する哀悼の意を表し、ロシアが救助隊を両国に派遣することを伝えた。プーチン大統領に人命を大切に想う感情があるのならウクライナでの戦争を直ちに停止すべきだと思う。言うまでもなく、戦争は今回の大震災のように、大きな規模で人々の命を奪う。
多くの国々や国際機関がシリア支援に安全上の理由から二の足を踏む中で、ロシア軍は少なくともアサド政権が支配する地域では救助チームの安全を提供でき、アサド大統領がロシアの支援の申し出を歓迎したことは言うまでもない。ロシアはシリア内戦でアサド政権を軍事的に支え、2015年9月からシリアに対する軍事介入を行っている。ロシアは300人規模の支援チームをシリアに派遣し、またトルコにも救助の申し出を行ったが、外国の救助チームでは最大規模だ。
「『絶えず互いに闘争するものと、互いに扶助するものとの、いずれが最適者なりや』という問を自然に向かって発するならば、われわれはただちに、相互扶助の習慣を持っている動物が正しく最適者であることを知るのである。」ピョートル・クロポトキン(1842~1921年:ロシアの思想家 母方はウクライナ人)『相互扶助論』(1902年)より
「人類の文化とは何か。人類の文明とは何か。考える機会を与えてくれた神に感謝する。真の『人類共通の文化遺産』とは、平和・相互扶助の精神でなくて何であろう。それは我々の心の中に築かれ、子々孫々伝えられるべきものである」中村哲(「学士会会報」832号〔2001年〕)」
日本を含む少なくとも19カ国がトルコ・シリア大震災に救助チームの派遣を申し入れたが、東アジアの韓国、台湾、中国も100人前後の規模の救助隊を送るなど救助の規模では東アジア諸国は世界でも最も多いほうだ。(ABCニュース2月9日)こうした東アジア諸国の動きを見ても軍事的緊張などは不合理に思え、外交や対話があれば東アジア諸国(台湾は国ではないが)は緊張や対立など排除できる。岸田首相などは中国の軍事的脅威ばかりを喧伝している印象だ。
現在、トルコ国内には360万人余りのシリア難民が居住するが、難民として受け入れてくれたトルコの恩義に報いるようにシリア難民たちがトルコの被災者支援に動いている。トルコ・イスタンブールのエセンユルト広場は被災者支援の活動の一つの中心になっているが、その中でシリア難民たちも献血や募金、衣服や毛布など支援物資の寄付などの活動に従事するようになった。滞在許可のないシリア人たちも献血は認められるようになった。
トルコは国連によれば世界で最も多くの難民を受け入れている国で、シリア内戦に伴う大量の難民の流入はトルコ社会を緊張させることになった。6月に行われる大統領選挙でもシリア難民の問題は一つの焦点になっている。エルドアン大統領も選挙を意識して対シリア関係を改善し、難民の帰還をシリア政府との間で協議したい意向だが、被災者の支援活動に従事するシリア難民たちは政治的な問題を排除して被災者たちを助けたいと述べている。トルコ中部のカイセリの町でも豪雪の中でシリア人たちが献血に駆け付けたことが報じられている。献血したシリア人の中には国籍など関係のない大震災が起きたのだから、一部の政治勢力が唱えるシリア人排除の訴えなど関係ないと述べている。(Middle East Eyeの記事)
トルコの反体制武装組織「クルド労働者党(PKK)」も含む「クルド国民会議(KNK)」もエルドアン政権がクルド地域の耐震インフラの整備を行ってきたことが悲劇の拡大をもたらしたことを非難しながらも、北西クルディスタン(クルド人居住地域)、トルコ、シリアの被災者たちの支援を呼びかけた。
https://kurdpress.com/…/KNK-calls-for-help-for-victims…/
今回震災が起きた地域は宗教的にはイスラム、キリスト教、民族的にはアラブ人、トルコ人、クルド人、トルクメン人、アッシリア人など実に多様な宗教、民族の人々が住む地域で、被災から立ち直るためには特に相違を乗り越えた相互扶助の意識や姿勢が必要であることは強調するまでもないだろう。
アイキャッチ画像は8日、トルコ南部カフラマンマラシュで、捜索活動にあたる日本の救助チーム
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230209-OYT1T50071/
トルコ・シリア大震災に救助チームを送るロシアープーチン大統領に人命を大切に想う感情があるのならウクライナでの戦争を直ちに停止すべきだ

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