愛の詩でアメリカを征服したアフガニスタン生まれの詩人ルーミー

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Translation / 翻訳

 ペルシア文学のイスラム神秘主義詩人のルーミー(1207~73年)は、アフガニスタンのバルフ近辺で生れたとされる。彼の詩は西欧や米国で人気があり、インド系アメリカ人の作家ディーパック・チョプラは1998年にルーミーの詩を著名な歌手や俳優が朗読したアルバム「愛の贈り物:ルーミーの愛の詩によって触発された音楽(A Gift of Love: Music Inspired by the Love Poems of Rumi)」というアルバムをプロデュースした。マドンナ、マーティン・シーン、デミ・ムーア、ゴールディ・ホーンなどが朗読を行った。アメリカは軍事的にアフガニスタンを占領したが、ルーミーはその愛の詩でアメリカを征服したとも言われている。


 彼の詩集はアメリカではベストセラーになっているが、スマホのケース、シャワー・カーテン、クリスマス・ツリーのオーナメント、玄関マットなどにも彼の詩の一節は見られる。ルーミーの思想やその人生には寛容が貫かれ、彼はすべての宗教は神との合一することを追求するものだと考えた。
 現代におけるルーミーの重要性は、欧米、特にアメリカでトランプ大統領のようなイスラム嫌いが見られる中で彼の詩作や著作を通じてイスラム世界の寛容な思想に触れることができ、イスラムが決して暴力的なイデオロギーでないことを知ることができることだ。

ルーミーの言葉が書かれたiPhoneカバー


 俳優ブラット・ピットの右腕にはルーミーの詩の一節がタトゥーとして彫られている。それはコールマン・バークスの英訳で「There exists a field, beyond all notions of right and wrong. I will meet you there.(正しさと誤りの概念を超えたところに野原がある。そこで君と会うだろう。)」というものだ。つまり、人間は互いの相違を乗り越えて寛容にならなければならないということだろう。

ブラット・ピットのタトゥー
https://www.leidenmedievalistsblog.nl/articles/rumi-and-the-hollywood-stars-the-source-of-brad-pitts-tattoo?fbclid=IwAR2cNSC2-ft1fNKi-RBViBdekp2Wguj9oDw6uVMI0TWeFpvKkbrQrcvssdQ


 1215年から1220年のモンゴルの侵入によってルーミーは、父バハヌッディーン・ワラドなど家族とともに、バグダードに逃れ、それからダマスカス、カラマン(トルコ南中部)、そして1228年にコンヤに行き着いた。つまりルーミーの家族は難民だった。


「ただひとつの息がある」


わたしはキリスト教徒ではない
ユダヤ教徒ではない
いいえ イスラム教徒でもない
わたしはヒンズー教徒ではない
スーフィーではない 禅の修行者ではない
いいえ どんな宗教にもどんな文化にも属していない
(中略)
わたしは
愛している
あの人のなかにいます
ふたつにみえて世界はひとつ
そのはじまりもその終りもその外側もその内側もただひとつにつながる
そのひとつの息が人間に息(いのち)を吹き込んでいます
(エハン・デラヴィ・西元啓子 (編集), 愛知ソニア (翻訳)『スーフィーの賢者ルーミー―その友に出会う旅』より)


 この詩のように、ルーミーは愛と寛容を説いたが、ルーミーには次のような説話がある。
 ある将軍がルーミーや他のイスラム神秘主義者は神との合一とか、奇跡とか精神・空想上の事象にどうして自らを捧げるのかと尋ねられると、ルーミーは、将軍たちは大規模に戦い、死、流血を国と国の間の境界にもたらすことに身を捧げているが、領土を分ける境界(国境)ほどの空想はない。神秘主義のような宗教的霊感(=スピリチュアリティ)は少なくとも人を殺すことはないと答えた。


 アメリカは軍事力でアフガニスタンをついに征服できなかったけれどもルーミーは愛の詩でアメリカを征服した。

アイキャッチ画像はスーフィの踊り
愛の詩でアメリカを征服したアフガニスタン生まれの詩人ルーミー

アンバー・ハードのタトゥーはオマル・ハイヤームの詩ですね
https://www.yournextshoes.com/amber-heard-farsi-tattoo/
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