アフガニスタン北東部のバダフシャーンはラピスラズリの産地だが、ルビーも現在に至るまで産出されている。バダフシャーンはシルクロードの要衝にあり、東西にはヨーロッパと中国、また南北にはインドと中央アジアのステップを結ぶ文明の十字路ともいうべきところに位置し、交易でも栄えていたが、それは次のマルコ・ポーロ(1254頃~1324年)の『東方見聞録』の中にある「バラシャンという広大な国」という一節からもうかがえる(第一章にある)。

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バラシャン(巴達哈傷、バダフシャーン)は広大な国である。住民はイスラーム教を奉じ、独特の言語を持っている。四面十二日行程という広袤(こうぼう)を持つ大国で、アレクサンダー大王とペルシア王ダリウスの王女との間にできた子孫が、この国の王位を世襲している。この国では歴代の王がアレクサンダー大王を記念して、現在に至るまで《ズルカーネイン》(アレクサンダー大王のアラビア語の異名)の称号をとるが、これはアレクサンダー大王がサラセン(アラブ)の言語に直したものである。
この国では《バラス紅玉》という宝石が産出する。・・・国王は部下に託してこの紅玉を諸外国の王侯貴族のもとにもたらさしめ、あるいは貢物・贈り物としての用途に充てしめる一方、一部は売却して金銀に交易するものだから、その私掘・輸出をかく厳禁して紅玉の価値を常に高価ならしめようとするのである。
「バラス紅玉」というのはバダフシャーンで採れるルビーのことだ。バダフシャーンの住民はタジク人、アラブ人、トルコ人、言語はペルシア語、あるいはトルコ語を使用する。(平凡社・東洋文庫『東方見聞録』註より)マルコ・ポーロが見聞したバダフシャーンでは13世紀から15世紀にかけてアレクサンダー大王の末裔を名乗る支配者による小王朝が存在していた。

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アフガニスタンやイランなどシルクロード地域で、古くからルビーが珍重されていたことは、下のオマル・ハイヤームのルバイヤートの一節からもうかがえる。
第五歌
イラムの園(その)も花と散り、
王の霊杯いづくぞや、
さはれ葡萄(ぶどう)に紅玉(るび)は生(な)り
水際(みぎは)の園に花ぞ咲く。
(※さはれ:それはそうだが)
これは詩人・英文学者の矢野峰人(やの ほうじん:1893~1988年)によるエドワード・フィッツジェラルドの英訳から訳したものだが、フィッツジェラルドの英訳は、
Iram indeed is gone with all his Rose, And Jamshyd’s Sev’n-ring’d Cup where no one
knows; But still a Ruby kindles in the Vine, And many a Garden by the Water blows,
となっている。
バダフシャーンが最初に記録に現れるのは、7世紀から8世紀にかけて中国の書物においてであり、マルコ・ポーロが記録した小王朝以前はエフタル、トルコ、アラブが支配していた。1584年にウズベク人に征服され、その一族による統治が続いたが、1822年にクンドゥーズのモラード・ベグが征服した。1859年にバダフシャーンは、カブールを首都とするバーラクザイ朝の朝貢国となった。1895年に英露条約によってピャンジュ川によってアフガニスタンとブハラ首長国の領土が画定され、1917年のロシア革命後にピャンジュ川以東のバダフシャーンは、タジク社会主義自治共和国のゴルノ・バダフシャーン自治州となった。1979年にソ連軍がアフガニスタンに侵攻すると、バダフシャーンのファイザーバードに軍司令部が置かれるようになった。

韓国ドラマ「ルビーの指輪」に出演
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農業が盛んで山間では、コメ、小麦、トウモロコシ、ブドウ、果樹が栽培され、羊毛や皮革のために家畜の飼育も行われている。バダフシャーンの鉱山ではラピスラズリやルビー、ダイヤモンド、金の採掘が行われている。アフガニスタンでは世界でも希少な鉱物資源が存在していることが知られているが、その採掘のためのインフラ整備、政治的安定が進めば、莫大な富をもたらすものと見られ、トランプ政権が米軍の駐留を継続したのも、その鉱物資源への関心からだったからという見方もある。
アイキャッチ画像は
最高品質のルビーの指輪、36億円超で落札 史上最高額
https://www.afpbb.com/articles/marieclairestylejp/3048367?pid=15820680&fbclid=IwAR0SKcupAfnQvn_zjFEb-9ywz0O7_vPqyGECPm8IqQtIJPAciwuy_4W4U8g
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