アメリカのフォークソング歌手ウディ・ガスリー(1912~1967年)の曲「我が祖国」の詞は下の通りで、そこには社会正義の考えが貫かれていた。「我が祖国」は、日本ではピート・シーガーやPPM(ピーター・ポール&マリー)の歌で広く知られているが、この歌は、2017年2月、スーパーボウルで、レディー・ガガによってトランプ大統領(当時)の「白人ナショナリズム」に抗議し、すべての人々の正義や自由を求める想いを込めて歌われた。

https://ameblo.jp/popfreak/entry-11385170707.html
〔我が祖国〕
In the squares of the city, In the shadow of a steeple;
By the relief office, I’d seen my people.
As they stood there hungry, I stood there asking,
Is this land made for you and me?
街角の広場とか
教会の塔の周囲とか
貧しい人の施設のそばで
仲間の姿を見てきたよ
みんな腹を空かせて立っていた
自分もそこに立ち尽くし
ぼんやりこう考えた
本当にこの国は
みんなのものなのかって?
ウディ・ガスリーは、第二次世界大戦中、米国商船隊に入り、商船で地中海世界を回り、シチリア島パレルモから北アフリカのチュニス、アルジェリアのオラン、アルズーなどを訪ねた。そこで、アラブやイスラム文化に初めて接することになる。
ガスリーは、シスコ・ヒューストン、ジム・ロンギーという音楽仲間とともに北アフリカの貧しい人々に接したが、そこで見た光景は、ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄』に登場するダストボウル移民キャンプのように貧しく、荒んでいた。ガスリーは、船員たちの使わない石鹸や余った食料を集め、貧しい人々に配った。商船隊では、イランの詩人オマル・ハイヤームに関するワークショップを開いたりしたが、ガスリー自身もハイヤームの「ルバイヤート」をギターやハーモニカの伴奏とともに録音した。その演奏の動画は下にある。
https://www.youtube.com/watch?v=SfUdHlTUhkU

https://ja.fanpop.com/…/43208047/title/lady-gaga-photo
ガスリーは、ハイヤームの「ルバイヤート」が説く無常観は、大恐慌時代のアメリカ社会の本質に近づき、富への執着の虚しさを説くものだと考えた。
極貧という小径をたどるまで、君は何も得られない、
血の涙で頬を濡らすまで、なにも手に入らない。
なぜ欲望に身を焦がすのか?
利己心を捨てぬかぎり、心清らかな人のようには、自由にはなれない。
―オマル・ハイヤーム「ルバイヤート」(蒲生礼一訳)

オマル・ハイヤーム (著), ロナルド バルフォア (イラスト), Omar Khayy´am (原著), Ronald Balfour (原著), & 3 その他
ウディ・ガスリーの「オールドマン(老いぼれ)・トランプ」(1954年)はトランプ前大統領の父親フレッド・トランプがニューヨーク・ブルックリンで経営する「ビーチ・ヘブン」アパートメントを黒人にはレンタルしないように指示したことを知り、作詞されたもので、
老いぼれトランプは知っている
彼がいかに人種的憎悪を煽り立てていることを
彼は心底から
人種差別を行っている
ここ、ビーチ・ヘブンの家族プロジェクトで
とある。第二次世界大戦からおよそ10年後、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジでガスリーは、ジャズ・スキャット歌手アフメド・バシールによるコーランの朗誦を好むなど、日ごろ接しているアメリカのキリスト教・ユダヤ教文化以外のイスラム世界の文化に接していた。そこには多様性を重んじるアメリカの良心があった。
アイキャッチ画像はウディ・ガスリー
http://auggiesdiner.jugem.jp/?eid=25

https://www.circustown.net/new/book/20160528ppm/
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