広島平和公園とアフガニスタンのバラ🌹 ―月が満ちるには時が必要

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Translation / 翻訳

 広島平和公園の一角には小さなバラの庭園がある。1960年に西ドイツ首相のアデナウアーが来日した際に、その随行員の一人に国会議員で医師のマックス・シュルツェ・フォールベルクがいた。彼は日本の桜の美しさに魅了され、西ドイツに桜の木の寄贈を依頼した。1968年4月に広島市から西ドイツに贈られた桜の苗木30本は西ドイツのシュバインフルト市に植えられた。工業都市のシュバインフルト市は連合軍の執拗な空爆にさらされ、空爆の惨禍を経たという点で広島市と共通点があった。桜の苗木の返礼としてシュバインフルト市から「ドフトボルケ」という品種のバラの苗91本が送られた。「91」はその前年(1967年)に他界したアデナウアー元首相の年齢と同じ数だった。(国際平和拠点ひろしま「広島平和記念公園のバラ」より)ちなみにドフトボルケの花言葉は「愛情、美、情熱、熱烈な恋、あなたを愛します」なのだそうだ。

シュバインフルト市
https://www.wikiwand.com/de/Gramschatzer_Wald
バラ
ドフトボルケ
https://greensnap.jp/post/2121387


 タリバン政権が復活したアフガニスタンでもバラは人々の目を楽しませる花だ。昨年、中村哲医師の福岡での「追悼の会」に出席した機会に関係者たちと話をすると、中村医師はバラを愛好していたとのことだった。中村医師のPMS(「ピース・ジャパン・メディカル・サービス)が用水路を築いたガンベリでは「深い森が覆い、遠くで人里の音―子供たちが群れ、牛が鳴き、羊飼いたちの声が、樹々(きぎ)を渡る風の音や鳥のさえずりに和して聞こえる」(中村医師)そうだ。また、PMSの農場の中に約4万平方キロメートルの記念公園があり、バラ、ジャスミン、ザクロなど四季の花々が咲き乱れるようになり、全国からの訪問者が絶えないと中村医師は語っていた。

アフガニスタンの人々が大好きなバラの花。うしろには畑仕事をしているおじさんが見えます
https://www.nishinippon.co.jp/image/175788/


 アフガニスタンでは国花であるチューリップや、バラなどたくさんの花をつける。バラも日本と同じように春と秋に花を咲かせ、サフランなどと並んでケシ栽培に代わる商品作物としても考えられていた。中村医師が活動していたアフガニスタン東部のナンガルハール州では、バラ油(ローズオイル)からバラの香水を製造し、その製品はドイツ、フランス、カナダなどに輸出されるようになっていた。


 アフガニスタンではタリバンがジャーナリストたちに暴力をふるったというニュースが入ってきた。ジャーナリストを殴ることは、彼らが信条とするイスラムの教義とは相いれない。イスラム法(シャリーア)によって統べられる世界は平和や安寧があり、暴力は否定される。タリバン指導層の多くは、アフガニスタンの戦争による孤児たちでパキスタンの神学校で教育を受け、イスラム世界本流のイスラムの解釈とは言えない。タリバンが強調するイスラムについてイスラム世界で真剣な議論が行われることはないだろう。タリバンが暴力で人々を威圧するアフガニスタンは現在イバラの道を歩んでいるように見える。


 アフガニスタン・バルフ出身の詩人ルーミー(1207~1273年)は次のような詩を詠んでいる。忍耐強くアフガニスタンの緑化活動に全力を傾注した中村医師や苦闘するアフガニスタンの人々の姿と重なるようだ。


ただじっと座って 待つことが忍耐なのではない
それは先を見通す力、全体像を描く力だ
棘をみながら薔薇の花を感じ
夜の闇の中で陽の光を感じる
愛の人には忍耐がある
彼は知っているから
月が満ちるには 時が必要なことを
(「詩 ルーミー Poetry of Rumi」のフェイスブック・ページより)

アイキャッチ画像は広島平和記念公園のバラ
https://hiroshimaforpeace.com/roses-in-hiroshima-peace-memorial-park/?fbclid=IwAR09oCHNOYEdLSpLUedDACLOKE8uuy1o3_QNAFWt9EYHtVdeKVqCIB7ujv8

神代植物公園のバラ 2019年5月
広島平和記念公園のバラ
https://hiroshimaforpeace.com/roses-in-hiroshima-peace-memorial-park/?fbclid=IwAR09oCHNOYEdLSpLUedDACLOKE8uuy1o3_QNAFWt9EYHtVdeKVqCIB7ujv8
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