「ヒトラーはいつも、偏見と敵意と憎悪とをかきたてつづけることに腐心しておりました。
若い人たちにお願いしたい。
他の人びとに対する敵意や憎悪に駆り立てられることのないようにしていただきたい。
ロシア人やアメリカ人、
ユダヤ人やトルコ人、
オールタナティヴを唱える人びとや保守主義者、
黒人や白人
これらの人たちに対する敵意や憎悪に駆り立てられることのないようにしていただきたい。
若い人たちは、たがいに敵対するのではなく、たがいに手をとり合って生きていくことを学んでいただきたい。 」
これは、リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー元ドイツ連邦大統領の有名な著書『荒れ野40年』からの一節である。
アドルフ・ヒトラーは、ドイツの閉塞された時代に、ロシア革命を指導したボリシェヴィキにユダヤ人が多かったと資本家や中間層の恐怖を煽り、また国民にはユダヤ人が世界を征服しようとしているとデマを流し、人々の「恐怖」を開拓し、アーリア人の優秀性を説き、ユダヤ人を弾圧していった。
危険なことは、「恐怖」を煽るデマゴーグたちが、かつてのナチスがそうであったように、主流にある政治勢力を、自らの側に引きつけてしまうことだ。

ニュールンベルク
1934年
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アメリカのトランプ現象は、まさにこのドイツの苦い経験を踏襲しているかのようだった。
トランプ政権の首席戦略官に指名されたステファン・バノンは、トランプの選挙キャンペーン中、ムスリムに対するヘイトを煽り続けたが、そうした反・嫌イスラム的傾向にトランプは目をつけたのだろう。トランプがバノンを選挙参謀とする一年近く前からバノンは、ブライトバート・ニュースの「シリウスXM」と題するラジオ・ショーでイスラムに対するヘイトを煽っていた。この番組の中でトランプの側近の一人のロジャー・ストーンは、将来アメリカの狂ったムスリムたちがレイプをし、殺害、略奪、公共の噴水で排便を行い、さらにアメリカ市民にハラスメント行為をすると語った。
このロジャー・ストーンをバノンは、アメリカで最高の政治思想家、戦略家ともち上げた。このような人物が「トランプ政権」の中枢に入った。
シリアの過激派は、トランプのイスラム・ヘイト的な傾向は過激派に対する支持を集めるのに都合がよいと歓迎していた。ヘイト的現象は日本も例外ではないが、それは無用な対立、衝突、さらには暴力、紛争をもたらすもので、人道的価値観とはほど遠い。私たちは歴史の教訓に学ばなければならない。

「コミック昭和史」より
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