プーチン大統領は9月30日にウクライナ4州を併合し、核兵器使用の可能性をほのめかすことの正当性の理由をアメリカが広島、長崎に原爆を投下し、日本、韓国、ドイツをいまだに占領していることを理由に挙げた。ロシアのウクライナ占領は強制的なものであり、米軍が日本、韓国、ドイツに基地をもつことはこれら諸国の政府との同意によるもので(日本では沖縄の基地問題などがあるが)、ウクライナ政府から拒絶されているロシアによるウクライナ4州併合とはまったく異なる。
かりにプーチン大統領が核兵器を使用すれば、核兵器保有の連鎖、いわゆる核ドミノを世界にもたらす可能性があることは疑いがない。
アメリカが広島、長崎に原爆を投下したことがソ連の核兵器保有をもたらし、アラブ諸国に囲まれて国家存亡の危機を感じたイスラエルもまた核兵器を製造した。1980年代のイラクの核兵器製造の意図は言うまでもなく、イスラエルの核に触発されたもので、イラクの核兵器への関心は、同様な関心をイランにもたらした。イランの核兵器製造の疑惑があった時、サウジアラビアなどアラブ諸国の研究者たちが、核抑止が中東地域にあってもよいのではないかと語っていたことを思い出す。
インドの核保有は隣国で、インドと敵対してきたパキスタンに核兵器を保有させることになった。他国を侵略し、核兵器使用を示唆するなど常軌を逸しているように見えるロシアの指導者が辞任することが国際社会の将来にとって望ましいことは明白で、そのような政治変動がロシア国民の意思によって発生することを願いたい。
下は長崎で被爆した福田須磨子さん(1922~1974年)の詩だが、世界の反核運動は被爆者の想いや被爆の悲惨な実態を起点に発展した。プーチン大統領はこうした被爆者の心情を知らないか、あるいは意図的に無視して寄り添っていない。下の詩は第五福竜丸の被爆の悲劇を背景に長崎の被爆者の反核の想いを表現したものだ。

https://www.nagasaki-np.co.jp/peace_article/2872/
福田さんは長崎師範学校の会計課に勤務していた23歳の時に被爆し、両親と長姉を失った。文筆活動によって原爆の非人道性を訴え、原水爆禁止運動や安保反対闘争に参加した。被爆の後遺症のために52歳の若さで亡くなった。
いのちある限り
罪もなき少年の頭上に
運命の閃光が炸裂し
悪魔の爪は 永劫に消ゆることなき
深い傷痕を残していった。
少年は号泣する気力もなく
火ぶくれた体を
噫(ああ) 固いベッドに横たえていた
激しい変貌は 多感な少年に
死を選ばせたが 死は彼を拒んだ。
絶望と恐怖の交錯する中でのろのろと 月日が流れて行った。
強いられた運命に堪えぬいて
少年はすでに若人となっていた。
死の灰が 日本の空を被い始めた置き
彼は沈黙を破って起ち上った
“原爆の不幸は我々で沢山だ”(後略)

いわゆる原爆症は繰り返し現れるのだろうか。60年代の福田さんのほうが深刻な印象を受ける。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/455027/
広島・長崎の被爆の実態は「三たび許すまじ原爆を」の世界的運動の原点となり、地理的にアメリカとソ連の間に挟まれ、東西冷戦の緊張を切実に感じたヨーロッパをヒロシマにしてはならないという「ユーロシマ」という言葉も生まれた。
政治的意図があったとはいえ、1980年代初頭ソ連は反核反戦平和運動を全世界に展開することを訴えた国でもあった。その運動の前衛を担ったのはプーチン大統領が所属していたKGBだった。https://www.univ-tokyo-penclub.com/z51.html 核兵器の使用は「核の冬」という深刻な環境破壊をももたらす。

https://longride.jp/nagasaki-postman/
プーチン大統領は1994年のブダペスト覚書にも違反している。ブダペスト覚書は、ハンガリー・ブダペストで開催されたOSCE(欧州安全保障協力会議)会議でアメリカ、イギリス、ロシアの3カ国が署名したもので、ソ連から引き継いだ核兵器を放棄したウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンの3カ国に対して、署名3カ国のアメリカ、イギリス、ロシアが安全を保障するというものだった。ロシアは2014年にクリミア半島を併合、また今年2月にウクライナに侵攻してこのウクライナの安全を保障するというブダペスト覚書の義務を反故にし、ウクライナを侵略してその安全を台無しにした。
これではロシアとの国際合意は今後不可能になるし、国際合意を容易に破る国が世界の平和の盾となる国連安保理の常任理事国というのはまったく許容できない。
アイキャッチ画像はプーチンを許すまじ
彼の言動は本当に不快だ
https://news.tv-asahi.co.jp/news…/articles/000269298.html

コメント