昨年2月26日付のAPの記事は、国際刑事裁判所(International Criminal Court: ICC)のカリーム・カーン検察官(イギリスの弁護士、国際法専門家、パキスタン系)がロシアによるウクライナ侵攻を注視していることを伝えている。ロシアはICC規程の締約国ではなく、ロシアの侵略行為については国際刑事裁判所には捜査・訴追する権利はない。もしこれらの権利が発生するとすれば、国連安保理の付託を受けた場合だが、ロシアが拒否権を行使するのは明白だからICCが捜査することは不可能だ。

https://4genderjustice.org/statements/karim-khan-elected-next-prosecutor-of-the-icc/?fbclid=IwAR0dt78E2J0mO5rrWhIMuUbdWSXowXgmdqPL6xTui7gcRiYpk_R204VgzGQ
しかし、戦争中の犯罪については締約国の人間でもなくてもICCが捜査・訴追することは可能だ。ICCはすでに2021年2月にエルサレムを含めたパレスチナ自治区でのイスラエルの戦争犯罪について、ICCの司法管轄権が及ぶ、つまりICCが取り扱える事件という判断を下し、現在捜査が行われている。
ICCは、19年11月、コンゴ(旧ザイール)で大規模な民間人殺害や性的暴行、女性の性奴隷化、少年兵使用を含む戦争犯罪を行ったなどとして、元反政府武装勢力指導者ボスコ・ヌタガンダ被告(当時46歳)に禁錮30年の実刑判決を下したことがあるなど、戦争犯罪については抑止的効果をもち始めている。
国際刑事裁判所は、2014年夏のイスラエルのガザ攻撃、ヨルダン川西岸へのイスラエル市民の移住(入植地の拡大)、また2018年3月に始まったガザ境界でのパレスチナ人によるイスラエルへの帰還を求めるデモに対するイスラエル軍の発砲、パレスチナ人ベドウィンの追放などを戦争犯罪の容疑があるとして捜査している。ベンソーダ検察官は、イスラエルがパレスチナ人の財産を破壊し、ヨルダン川西岸や東エルサレムからパレスチナ人たちを追放していることが戦争犯罪に相当すると考えている。
カーン検察官は、ICCが戦争中の虐殺、人道に反する罪については司法権をもつと述べたが、人道上の罪とは殺害、拷問、レイプ、市民の強制追放など、不当な力の行使のことをいい、アムネスティ・インターナショナルはロシアのウクライナ侵攻自体が市民の居住地域への無差別攻撃、また本来は保護されなければならない病院など医療施設の攻撃を含んでおり、ロシアの攻撃は無差別的なものであると主張している。
APの記事は、またロシアのウクライナ侵攻については、ICC司法権は及ばないものの、世界では40カ国ぐらい侵略行為自体を罰する法律をもっていることを明らかにしている。有名なところでは、スペインもそうした法律をもつ国だが、侵略行為ではないものの、チリの独裁者ピノチェト将軍をスペインが虐殺・拷問など人権侵害の理由で告発して、ピノチェト氏の滞在先のイギリスの当局が逮捕・拘束したことがあった。今後、40の国のうちどこかの国がロシアの侵略を自国の法律で告発する可能性もある。

https://mainichi.jp/articles/20220227/k00/00m/030/057000c
ウクライナはICCの締約国ではないが、ICCの司法権が自国に及ぶことを認めている。ICCは2014年にロシアが併合したクリミア半島、またウクライナ東部における犯罪について予備審査を行っている。プーチン大統領にも「くさい飯」を食わせたほうが、今後の同様な侵略行為について抑止効果をもつことは明らかだ。
アイキャッチ画像はプーチン大統領は「戦争犯罪人」
https://www.timesofisrael.com/how-putin-distorts-wwii-holocaust-to-justify-invasion-of-ukraine/?fbclid=IwAR2RcglZMbz7r1wP6tDY4kA9qa5404-lmWsGHTEqUfBKaIt354GmmE1a_j8

町山君もウクライナ支持か
永野芽郁
https://thetv.jp/news/detail/1047881/10448421/
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