ロシアに脅かされる東欧の親日国 ―ウクライナ

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 イギリスのジョンソン首相は、ロシアのプーチン首相と電話で会談し、ウクライナの主権と領土保全を尊重し、ウクライナを不安定化させる試みは重大な結果を招くと警告した。ロシア軍の大規模な対ウクライナ国境への集結が報じられるようになって、2014年にロシアがクリミア半島を併合した時のような緊張がヨーロッパをはじめ国際社会に走っている。

 ウクライナは旧ソ連から独立すると1992年に日本との外交関係を結んだ。2017年には外交関係樹立25周年を記念して「ウクライナにおける日本年」と位置付けられて日本の文化行事がウクライナ各地で催された。

 敗戦でウクライナに抑留された旧日本兵たちは北東部のハルキウや南部のザポリージャに連れていかれ、ドイツ軍に破壊されたこれらの都市の復興作業に従事させられた。また、冷戦下にあってソ連軍は抑留者たちから細菌兵器を開発していた731部隊に関する情報を収集することも行っていた。

(O.ポトィリチャク、V.カルポフ、竹内高明『ウクライナに抑留された日本人』東洋書店、2013年より)。

 ウクライナには東部5州に少なくとも11カ所の主要な収容所があり、1946~49年に最大で4、847人の日本人抑留者がいた。

 ウクライナと戦火を交えたドイツ兵たちとは違って、ウクライナでは旧日本兵たちに対する扱いは比較的良好だったようで、1日3食の食事と、魚や肉も与えられる場合もあったという。ウクライナで客死した旧日本兵は211人、その中でもドネツク州の炭鉱の事故で亡くなった人が多かったが、ウクライナ国内に15カ所に埋葬された日本人たちの慰霊碑はないそうだ。

 樺太で行方不明になり、2000年に戦時死亡宣告を受けていた旧日本兵の上野石之助さん(当時83歳)が、ウクライナで生存していたことが判明し、2006年に63年ぶりに岩手県洋野町に帰郷している。

2006年: 終戦後もウクライナで生活していた元日本軍兵士上野石之助さんが63年ぶりに一時帰国

 ウクライナでは日本のアニメは人気があるらしい。「ポケットモンスター」「鋼の錬金術師」「コードギアス」「デスノート」など、ウクライナの若者が日本に来ると、日本以上にウクライナでは日本のアニメが人気のあることに容易に気づくらしい。

 ウクライナで日本が強く意識されたのは、2011年の東日本大震災の際で、日本を激励するための様々な行事が催され、被災国日本との連帯が示された。

 ルガンスク国立大学外国語学部の日本語を学ぶ学生や教員たちが千羽鶴を折り、被災者との連帯の意志表示が行われた。一人の学生が千羽鶴は悲しみをやわらげると提案したことが千羽鶴作成となった。また、福島の原発事故を受けて非常事態相とリヴィウ州知事がリヴィウ市内のヨハネ・パウロII世記念公園内の聖母生誕教会付近で、チェルノブイリ原発事故と日本の大震災の犠牲者を追悼するために日本のシンボルである桜とウクライナを象徴するガマズミ(スイカズラ科の落葉低木)苗の植樹を行った。同様な慰霊行事はムカチェヴォ市、ウジュゴロド市、ムカチェヴォ市、ウジュゴロド市、ザカルパチア州チョプ市でも行われるなど、日本との連帯がウクライナでは広範に見られた。

千羽鶴を折るウクライナの生徒たち

 キエフの国立オペラ・バレエ劇場が被災者向けのチャリティ・コンサートを行い、日本国民を激励するための歌「Japan」(作詞:エヴゲニー・マチュシェンコ,作曲:ミハイル・ネクラーソフ)が披露された。テルノーポリ市では、慈善コンサート「サクラの哀歌」が開かれている。

 ジトーミル市の慈善基金「チェルノブイリの人質」は簡易放射線測定装置をチェルノブイリ原発事故被害者への支援を続けてきたNGO「チェルノブイリ救援・中部」(名古屋市)に提供した。ジトーミル州の慈善基金「チェルノブイリの人質たち」にウクライナ市民及び団体から多くの義援金が寄せられ、「頑張って下さい,私たちは日本とともにあります」という内容の手紙も届けられた。同じ原発の被害を受けた国として日本に同情する声がウクライナでは多かった。

桜の植樹

 2019年2月7日の「北方領土の日」にはキエフのロシア大使館の前でウクライナの若者たちが安倍政権の2島返還でロシアと交渉する姿勢をとらえて「ロシアにだまされないで」という抗議の呼びかけを行った。抗議したウクライナの若者たちは、不法に占拠されるのは2島ではなく、4島だと主張している。クリミア半島を併合されたウクライナにとっては国際法を無視して領土を奪うロシアへの反発が強くある。

キエフのロシア大使館前で日本への北方領土返還を求めるウクライナの若者たち=喜田尚氏撮影
https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20190225002457.html

 ウクライナと日本では、ロシアの脅威や原発事故の悲劇など重要な共通項があるが、日本をはじめとする国際社会には領土については公平な判断が求められる。特に日本はロシアなど近隣諸国と領土問題を抱えのだから、ロシアのウクライナに対する姿勢については強く非難を行うべきではないか。

写真は https://www.flickr.com/photos/mofaj_tohoku/sets/72157626377803098/ より

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