ポピュリズム(大衆迎合主義)とナショナリズム

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 イギリスの理論物理学者のスティーヴン・ホーキング博士(1942~2018年)は、2016年5月にドナルド・トランプ氏が大統領選挙の共和党候補の指名を受けることが確実になると、彼のことを「最も低レベルの層の大衆に受けているように見える扇動政治家」と形容し、またイギリスのEUからの離脱について「世界を相手に、イギリスが一人で戦えた時代はもう遠い昔のことだ。イギリスはもっと大きな国の集まりの一部になる必要がある。安全面、貿易面の両方においてその方がメリットがある」と語った。

トランプは最も低レベルの層の大衆に受けているように見える扇動政治家
ーホーキング博士
https://www.pinterest.jp/pin/525795325238131860/?lp=true


 ホーキング博士は世界の民主主義の手本とされてきた米国、イギリスの民主主義の「衆愚政治化」を指摘していた。


 橋場弦氏は『丘のうえの民主政―古代アテネの実験』(東京大学出版会)の中で「たしかに前4世紀のアテネを『衆愚政』と断定するのは客観的ではないが、民主政治の中にひそむ『衆愚政』の危険性は認識すべきであり、『民衆の望むことを実現することは良いことだ、たとえ手続きをふまず、ルールに反していても・・・』というノリで『改革』が進み、憲法がないがしろにされている現代の日本の政治状況(ポピュリズムと言われる大衆迎合政治)を批判する用語としては有効であろう。」と書いている。ポピュリズムを高揚させるには愛国心であるナショナリズムが訴えることは手っ取り早い。誰にでもある愛郷心はしばしば政治家たちの唱えるナショナリズムに開拓された。


 日本の権力者は戦前、国土の美しさ、伝統の素晴らしさ、日本人の規律正しさなどを強調し、破滅的な戦争に突き進んでいったが、いまの政治や文化、一部のジャーナリズムにもこの傾向が強くあるだろう。歴史家の保阪正康氏は生活倫理、自然との共生、弱者へのいたわりなどを大事にする「庶民ナショナリズム」が今の日本には求められていると主張する(『ナショナリズムの正体』 文春文庫)。

http://www.asyura2.com/18/senkyo243/msg/440.html


 塩野七生氏によれば、エルサレムの解放を大義とし、エルサレムでのムスリムやユダヤ人の虐殺を伴った「十字軍」は、熱狂した民衆が「神の声を聞いた」と信じて「民衆十字軍」でエルサレムをめざしたのが始まりだったという。民意が熱狂的に支持した戦争は歴史上多々あり、第二次世界大戦の惨禍を招くのに主要な役割を担ったドイツの独裁者ヒトラーは、「民衆が何も考えないという事は、政府にとってなんと幸運な事だろうか」と語った。

ETV特集「武器ではなく 命の水を-医師・中村哲とアフガニスタン」
戦乱のアフガニスタンで干ばつと闘い続けてきた医師の中村哲(69)。始めたのは用水路の建設。その15年の記録。
https://twitter.com/jdocs/status/774164331839627265


 ポピュリズムは大衆、あるいは国民に広くある不安や閉塞感を開拓して、その情緒的感情に訴え、既存の秩序に挑戦する考えや運動である。ポピュリズムは「大衆迎合主義」とも解されるが、その一つの形態であるイタリアのファシズム、ドイツのナチズムなどは時代のよどんだ空気を背景に台頭した。大衆の「何も考えない」ような情緒的判断によって、将来に大きな悔悟があるようなことはないようにしたい。
アイキャッチ画像は新垣結衣
https://www.pinterest.jp/pin/726275877380345547/

ヒトラーを支持するドイツの人々
https://www.jdnmirror.com/…/another-mudshark-commits…/
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