米国のバイデン大統領は昨年8月1日、アルカイダのNO2だったアイマン・ザワーヒリー(ザワヒリ)容疑者を殺害したと発表した。バイデン氏は「正義は実現された。テロリストのリーダーはもういない」と語ったが、米国がテロを軍事力で制圧しようと考えている間はテロリストの指導者は今後も続々と現れるに違いない。

https://www.washingtonpost.com/obituaries/2022/08/01/ayman-al-zawahiri-al-qaeda-dead/?fbclid=IwAR1LpX0zzI8YqV1xZq7WGxRB9zivZTj-pTm6OxmnIrAVPaSevXohz6bUmRc
2001年の911の同時多発テロ事件が起きた直後、米国の歌手ピート・シーガーは「悼みと癒しの時(A time to mourn, a time to heal)」という文章を書き、広島・長崎への原爆投下はテロ行為と述べた。広島・長崎は軍事目標ではなく、日本を降伏させるためのものだったと語っている。米国や米軍は長い間テロ行為である戦争を行ってきて、現代はより多くのテロリズム(=戦争)があるとシーガーは語っていた。シーガーによれば、911のようなテロリズムは人々に戦争を止めなければならないことを教え、大規模なテロを受けて平和を愛する人々がこれまで以上に増えていると彼は観察していた。この文章で訴えられているのは、爆弾でテロを抑制しようとすればするほど、テロリズムを増殖することになるというものだが、その意味で彼はブッシュ大統領よりも賢明で、理性的な主張を行っていた。
http://www.littlemag.com/sep-oct01/seeger.html

原爆投下は大規模なテロだろう
https://artsandculture.google.com/story/uwXRRfqvSwUA8A?hl=ja
対テロ戦争で、テロは抑制されるどころか、大規模なテロはヨーロッパ各地に広がり、スペインのマドリード(2004年3月11日、191人死亡)、イギリス・ロンドン(2005年7月7日、56人死亡)、フランス・パリ(2015年11月13日、130人死亡)などヨーロッパの主要都市で大規模テロが発生し、世界を震撼させていった。 チャールズ国王が911の同時多発テロを起こしたとされるオサマ・ビンラディン容疑者の家族から2013年に100万ポンド(約1億6000万円)の寄付金を受け取ったことが問題になったことがあったが、ピート・シーガーのように考えれば、イギリスも米国と同様に大規模なテロを行ってきた国だ。イギリスはそのインド支配で3500万人のインド人の死に責任がある。(”Britain is responsible for deaths of 35 million Indians, says acclaimed author Shashi Tharoor,”,INDEPENDENT, Monday 13 March 2017)

映画「インドへの道」
アマゾンより
バイデン氏は「正義」は達成されたと語ったが、反米テロは米国の不正義に対する反発から起きている。米国はイスラエルの占領は黙認する一方で、サダム・フセインのクウェート侵攻やプーチンのロシアによるウクライナ侵攻には容赦しない姿勢を見せた。米国の二重基準は中東イスラム世界の人々からは「不正義」なものと見なされ、反発されている。ロシアのウクライナ侵攻後の欧米諸国のロシア非難や対ロシア制裁に中東諸国政府が冷めた対応する要因の一つには米国など欧米諸国の「二重基準」にしらけていることがある。

ビルの崩落の仕方が不自然に見えた
https://www.dw.com/en/9-11-through-african-eyes/a-59142687
欧米諸国がテロを爆弾で封じ込めようとすればするほど、テロで報復を考える勢力は現れ、その形態もますます過激になり、大量破壊兵器を用いる可能性すらある。現に、オウム真理教は化学兵器によるテロを行った。ピート・シーガーが言うように人類がその生き残りを考えるならば、暴力の連鎖はどこかで断ち切らなければならない。
「テロリスト」の主張を理解しなければテロのない世界を実現することはできない。1990年代、米国務省を訪ねた時、官僚たちはテロ対策として中東イスラム世界の福利の向上を考えていない様子で、驚いたことがある。彼らがテロ対策として優先していたのは、テロリストに関する情報の蒐集や軍事的制圧だった。少なくとも日本は教育や医療など生活支援をテロ対策の優先事項として考えてほしいと思う。テロ対策で米国の軍事行動に明白に協調すれば、日本もまた不毛な暴力の連鎖に巻き込まれるだけだ。
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