ポール・エリュアールが語る本当の同胞愛とはなんだ?

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Translation / 翻訳

 昨年8月18日、自民党の萩生田政調会長が午後、6月に生稲晃子参議院議員と旧統一教会の関連施設を訪問した経緯について語り「旧統一教会の悪い噂を聞くことも報道に接する機会もなかった」と述べた。明白なウソである。萩生田氏は旧統一教会の教団支部をしばしば訪れ、講演まで行い、選挙では教団からの支援を受けていたとは少なからぬ元信者などの証言で明らかになっている。道徳教育を強調し、公徳心を説く文科大臣も務めたことがある人が虚偽の発言をすることは「正義はどこに行った?」という感じだ。

ひどい言い訳です。知性を感じません。


 フランスの詩人ポール・エリュアールは『 よき正義(法則) 』という下のような詩を残した( 大島博光訳)


葡萄から 葡萄酒をつくる
石炭から 火をつくる
接吻(くちづけ)から 人間をつくる
それが 人間の温かい法則だ
戦争と悲惨に 抗して
死の危険にも めげず
ひたすら 自分を守る
それが 人間の厳しい法則だ
水を 光に変える
夢を 現実に変える
敵を 兄弟に変える
それが 人間の優しい法則だ
古くて新しいひとつの法則が
完全をめざして進んでゆく
子供のこころの奥から
最高の理性にいたるまで


 萩生田氏など旧統一教会と関わりをもち、タカ派的発言を繰り返す政治家たちの言動はエリュアールが表現するような他者に対する温かい優しい感情や、自らに対する厳しさに欠けている。霊感商法の被害を受け、家庭が崩壊した人たちに対する配慮がまるで見られない。エリュアールの詩作は社会正義と同胞愛を目的とするものだが、国民の信頼を裏切る政治家にはその両方とも欠如している。


 ドイツ出身の医師、博物学者であるエンゲルベルト・ケンペル(1651~1716年)はオランダ東インド会社の医師として長崎の出島で生活し、江戸も2度訪ねて将軍綱吉に拝謁もした。彼の日本人に対する観察は肯定的なものであり、貧しい農民から身分の高い武士まで日本全体が礼儀と道徳を教える学校のようだと記している。(B・M・ボダルト=ベイリー『ケンペル 礼節の国に来たりて』ミネルヴァ書房、2009年)


 森友、加計、旧統一教会などで政治家たちのウソに接していると、日本の政界からはそのような礼儀と道徳は失せてしまったかのようだ。政府の閣僚や政務官などがカルト教団に関わりをもっていたといのは国際社会に恥をさらし、日本が孤立に向かうかのようだ。戦前は軍人を含めて政府中枢にいる人々がウソを重ねて破滅に至ってしまった。萩生田氏は安倍元首相の参謀のような人で、その意味でもでたらめな作戦で将兵や市民に多数の犠牲をもたらした戦前の軍参謀たちを想起させる。ウソの積み重ねが取り返しのつかない悲劇を生んだ。

笑ってしまいました


 他方、不誠実な政治家たちに怒る国民が多いということは国民には社会正義の考えが根強いということだろう。他国に比べて犯罪の発生件数が少ないことからも日本人には正義の観念が強いことがうかがえる。

萩生田や生稲とはえらい違い
立正大学のページより


 現在、旧統一教会の問題で日々ニュースの話題になっている安倍元首相の周辺にいた政治家たちは道徳の教科化など道徳教育の強化を主張してきたが、その道徳は愛国心の育成など復古的なものだった。その政治家たちがスキャンダルで日本のイメージを低下させ、国民の愛国心をも裏切ることになっている。ウソをつけばそれを隠すのにさらに多くのウソが必要になり、結局信用を失うということは最近問題になっている政治家たちの見苦しい言い訳を見聞きしてつくづく思う。ウソで国民の信頼を裏切る政治家たちは同胞愛に著しく欠如している。


アイキャッチ画像はエリュアール夫妻
https://www.gettyimages.co.jp/%E5%86%99%E7%9C%9F/paul-%C3%A9luard?fbclid=IwAR0FqOSHgC79db9kIOlT4ooBoGkUA46sT_P0C-uTfCC8qks0mUUf7ZT0BmQ

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