公文書管理と「真理があなたを自由にする」

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Translation / 翻訳

 公文書は、政府の透明性と責任を確保する媒体であることは言うまでもない。東日本大震災後に、民主党政権が政府会議の議事録をつくっていなかったこともあって政府の文書管理のガイドラインが規定された。当時野党だった自民党、公明党は民主党政権の文書管理がずさんだと非難し、菅首相もその著書「政治家の覚悟」(単行本、2012年)の中で「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然」と公文書管理の重要性を強調していた。しかし、このように公文書管理の重要性を説いた章が新書版では削除された。背景には森友、加計問題、「桜を見る会」などで改ざん、廃棄などずさんな文書管理が明るみに出た後ろ暗さがあるかもしれない。


 日本の政界では公文書など政治の透明性の重要性が理解されていないのではないかと思ってしまう。海外から国際政治や歴史学の研究者などが来日して日本の政治指導者に会おうとしても、容易にアポイントメントがキャンセルされてしまうなどの声にも接したことがある。政治家へのインタビューもまた公文書と同様に、政治プロセスの検証のために必要だ。


 菅首相は、訪問している東南アジア諸国を自由や民主主義など基本的価値を共有する戦略的パートナーであることを強調しているが、公文書管理のずさんさに見られる隠蔽体質は民主主義の価値観とは合致しない。

国立国会図書館
https://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/missionandroles.html


 参議院議員として国立国会図書館の創設に尽力した歴史家の羽仁五郎(1901~83年)は、「戦前の軍部主導の圧政は議員の無知がもたらしたものであり、再び無知の犯罪を犯させてはならないし、犯してもならない」と考えて、国立国会図書館法前文には「国立国会図書館は真理がわれらを自由にするという確信に立って」という文言が入れられている。これは、新約聖書ヨハネ福音書8章32節の「真理を知るようになり、その真理があなたがたを自由にする」というイエスの言葉がモデルになっているが、羽仁はこの言葉をドイツ留学中に大学の銘文の中に見たそうだ。

https://www.lisbo.jp/detail/90


 この前文によって羽仁は日本の図書館があらゆる文書の公開、読む自由の保障、検閲の禁止、出版の自由等の基盤の上に自由に発展することを願った。


 1971年に国立公文書館が設置されたが、その設置の理由を山中貞則総務庁長官は「国立公文書館は、わが国の歴史を記録する貴重な公文書類を長く後世に伝えるとともに、過去の経験と教訓を現代に生かす重要な役割を果たすことを目的とする」と語った。


 公文書の重要性は、国立国会図書館法前文や山中長官の説明にもある通りだが、それをないがしろにするようでは、日本の将来の自由が閉ざされ、過去の教訓を現代や未來に活かすことができない。
アイキャッチ画像は三好彩花
https://twitter.com/7_netshopping/status/1233333772306616320?lang=ga&fbclid=IwAR2n5ATSh-_LtlqTUuL9GAa0FAz8HuLEMpILEj2ss32YmoUJUlhvXkocemg

国立公文書館
https://www.gotokyo.org/jp/spot/603/index.html
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