毎日新聞に中央大学名誉教授の吉見義明氏による「『慰安婦問題はデマ』というデマを考える 『歴史修正』が日本おとしめる」という記事が掲載された。
https://mainichi.jp/articles/20190913/dde/012/040/014000c
吉見氏は、大阪市の松井一郎市長の「慰安婦問題は完全なデマなんだから。軍が関与して強制連行はなかったわけだから。」や名古屋市の河村たかし市長の「強制連行し、アジア各地の女性を連れ去ったというのは事実と違う」という発言を事実認識が間違っているし、慰安婦問題がわかっていないと断じている。慰安婦問題の核心とは、「外出の自由」「居住の自由」「廃業の自由」「拒否の自由」という4つの自由がなく、「性的奴隷」と呼ばれる状態に置かれていたことだと吉見氏は語っている。吉見氏は、慰安婦問題は「日本軍が女性の自由を奪い、性行為を強制したという女性の人権問題そのもの」と述べている。吉見氏は、従軍慰安婦に関する資料を600頁にも及ぶ文字通り『従軍慰安婦資料集』(大月書店、1992年)として編集した。
今年5月に反戦を貫きながら1944年にフィリピン沖で戦死した東大生・中村徳郎(とくろう)さんの手紙や日記などの資料47点ついて、ゆかりのある山梨県甲州市の文化財に指定された。甲州市の保坂一仁(かずひと)市教育長は「ありのままの資料がないと、歴史が変わって伝わる恐れがある。文化財指定により、記録を正しく残せる」と語った。
吉見氏が集めたのもありのままの資料だろう。従軍慰安婦がいなかったという松井市長らの発言は自らの日頃の考えに合わせた思いつきで、歴史を正確に研究したり、学んだりしたわけではない。慰安所は、中国戦線を描いた勝新太郎主演の映画「兵隊やくざ」にも登場するし、水木しげる氏の漫画にも「朝鮮ピー(朝鮮半島出身の慰安婦)」や「ナワピー(沖縄出身の慰安婦)」が描かれている。水木氏は「慰安所はまさに地獄だった。補償すべきだろうな。」と語っている。これらの映画や漫画によらなくても、吉見氏などの著作や資料などでまぎれもない史実となっている。
歴史はナショナリズムに援用されることがあってはならないと思っている。日本も歴史認識で近隣諸国と円滑な関係を築けないでいるが、決してナショナリズムで対抗し、尖鋭な対立感情を煽ることがあってはならないと思う。歴史問題についても冷静に対応すれば、日本に対する国際社会の共感は定着するはずだ。
「不敗国であるとて、誇りに思って済ましていられるだろうか。うぬぼれた国で興隆した国はない。」 ―中村徳郎(1943年5月15日)
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