岸田文雄首相が国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)首脳級会合で、二酸化炭素(CO2)の排出が多い石炭火力発電の廃止の道筋を示さず、地球温暖化対策に前向きではない国与えられる「化石賞」を受賞した。
地球温暖化は、アフリカのサハラ砂漠地域では武装集団の台頭を招いてきた。マリやアルジェリア南部など北アフリカの不安定化の要因の一つに気候変動という問題がある。
20世紀の最初の60年間は、この地域では適切な雨量があり、マリの農業を支えていた。ところが1970年代になると、インド洋からの温度が高まった海流によってマリやアルジェリアなどサーヘル地域(サハラ砂漠とその南縁に位置するところ)の著しい乾燥化をもたらした。
1970年代の干ばつはマリ北部に住んでいたトアレグ族をリビアに移住させ、リビアのカダフィ政権は彼らを傭兵部隊に仕立てて、「イスラム軍」と呼称した。この「イスラム軍」は1980年代のレバノン内戦に派遣されたり、1990年代にはパキスタンで厳格なイスラムのイデオロギーに触れ、アルカイダなどの武装集団とも関係をもったりした。マリの武装集団が先鋭化するのはリビアで傭兵として活動していたトアレグ族が2011年のカダフィ政権崩壊後によってマリに帰国してからのことだ。

マリやアルジェリアなどでの武装勢力の台頭は、マリ中央政府の権威の低下を背景にするが、それはマリで1970年代以降干ばつが続き、農業生産が落ち込み、数十万人もの人々が国外に流出していったことと関係する。2013年にアルジェリアのイナメナス付近の天然ガス精製プラントが武装勢力に占拠されて日本人10人が犠牲になった事件の背景にも環境問題があったことは確かといえよう。
地球規模の暴力の背景には、やはり地球規模の環境悪化という問題があるということを世界的に認識させた事件だったが、テロの抑制のためにも環境問題の改善が必要であり、やはり武力だけでは暴力を封じることは不可能ということをイナメナスの事件は教えていた。
同様な問題は中村哲医師が活動していたアフガニスタンも抱えていて、中村医師もまたアフガニスタンの深刻な干ばつは地球温暖化がもたらしているという危機感をもっていた。中村哲医師は「今ほど切実に、自然と人間との関係が根底から問い直されている時はない」と語り、自然と人、さらに人と人の和解を探る以外、人間が生き延びる道はないと主張していた。

写真はBBCより
Climate change: Green groups call for COP26 postponement – BBC News
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