欧米のイスラム・フォビア(嫌い)は許されない ―イランのヒジャーブ着用の強制に関連して

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 イランでヒジャーブの着用の仕方で宗教警察にマフサー・アミーニーさんが死亡した事件によってイランのほぼ全土で抗議の声が高まり、抗議行動は3週目に突入した。抗議運動は、強権的手法でヒジャーブを強制したり、あるいは抗議行動を警察権力で抑圧したりすることに向けられたものである。イラン政府の権威主義的な手法に抗議し、自由を求める性格のものだ。ベールやスカーフの着用はあくまで女性の内面の問題で、着用する自由もあるし、またしない自由もある。


 他方で欧米諸国がイランのヒジャーブ着用強制を非難するのはとかくありがちな欧米の偽善的で、横柄な響きがあると言わざるを得ない。ヒジャーブ全般を否定し、イスラムの女性たちがヒジャーブを着用することをなくそうとするのは誤りだ。イランとは逆にフランスではスカーフ着用が禁止され、ヨーロッパ諸国ではスカーフやベールの着用が制限されるが、イスラム世界ではイスラムの復興現象もあってむしろスカーフを着用する女性のほうが増えている。スカーフ着用の女性が増加するのは、欧米化の潮流がある中でイスラムの女性たちが自らのアイデンティティを取り戻したいという想いもあるだろう。イランのスカーフ着用が問題なのは(アフガニスタンのタリバンなども同様だが)それを強制したり、強制のために暴力的手法を用いたりするためだ。

ヒジャーブの女性への敬意を
https://areomagazine.com/2021/11/29/hijab-is-not-a-symbol-of-freedom/?fbclid=IwAR1F-t9Nnyf8Cj5-ppsSizz_2OszUgbu_zGJRQigHTB2B4gFWsldgPFVIyY


 イランでの事件はスカーフが時代遅れだとする欧米のイスラムへの偏見を助長しかねない。欧米のメディアには、欧米諸国政府にイランへの介入を促す論調すらあるが、アメリカのブッシュ政権はアフガニスタンやイラクの女性たちのスカーフ着用をなくすという思い上がった意図で軍事介入して多くの市民の犠牲をもたらした。現在のイラン政府の弾圧の比ではなく、犠牲者の桁数が違う。欧米のメディアの報道ではイランの女性と連帯を示すために髪を切ったり、スカーフを焼いたりする女性の姿が強調されるが、現在イランで起きている暴動が権威主義体制に対する闘いであることを忘れさせるものだ。


 アフガニスタンでは、女性たちが政府の強制がなくてもスカーフや、ブルカを着用する国だ。2001年、アフガニスタンでの対テロ戦争開始後にタリバンと戦う北部同盟の支配地域に入ったが、女性たちは例外なくブルカやチャードルを着用していた。欧米諸国はイスラム諸国の女性の権利を推進すると訴える一方で、欧米諸国内で暮らすムスリム女性たちの権利を制限してきた。


 欧米社会でムスリム女性がヒジャーブを着用した場合、組織的な嫌がらせを受けることもあり、ムスリム女性が嫌がらせを受けない日はないほどと言われるほどだ。ムスリム女性たちは、人種差別主義者から偏見に満ちた攻撃を受けてきた。

イスラム・フォビアは自由ではない
https://www.independent.co.uk/voices/france-islamophobia-headscarf-hijab-school-julien-odoul-secularism-a9158081.html?fbclid=IwAR2hxA8UusO9Q3BtCQIP9vvFJxzlKgPDJIcbFm4UvJkoXZ0tx3ytV_RM_rM


 ヒジャーブを着用するのも女性の権利と言えるが、ヨーロッパでは多くの国でヒジャーブの制限を行っている。オーストリア、フランス、ベルギー、デンマーク、ブルガリア、オランダ、ドイツ、イタリア、スペイン(カタルーニャの一部地域)、スイス、ノルウェーなどでは、イスラム教徒のヒジャーブの全面的または部分的な禁止が導入されている。

I love my hijab
https://www.deviantart.com/…/art/I-love-My-Hijab-474995451


 女性が体を覆うベール(地域によってニカーブ、ブルカなどという)や、あるいは頭にスカーフ(ヒジャーブ)を着用するのは女性の保護を表わすイスラムのフェミニズムともいえる。
 女性が体や髪を隠すというイスラムの宗教信条の一つであり、ムスリム女性にとってはその信仰心を表わすものである。女性のファッションも国や地域によって差異があり、インドネシアやマレーシアなど東南アジアの女性たちは、スカーフで毛髪を隠し、他は肌の露出は大胆にしないものの、ジーンズなど日本や欧米と変わらない服装のところもある。東南アジア諸国ではスカーフを強制しているということはない。
アイキャッチ画像はスカーフをとって抗議する女性
イラン・テヘランで
https://www.americanchronicles.news/the-videos-showing-the-massive-protests-in-iran-after-the-brutal-death-of-mahsa-amini/?fbclid=IwAR2VvPX4I51HjtuxRZZ6qq0CBpFXj3K4Aaj_yy2Gh6AmB3WBrvY2SxWDtzQ

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