総選挙で日本維新の会の議席が4倍になり、韓国の「中央日報」では「日本の総選挙、本当の勝者は強硬右翼『日本維新の会』…第3党に躍進」という見出しも出るくらいだ。大阪など近畿で躍進するのは、その「副首都」構想なのだろうか。「副首都」については、「首都・副首都法を制定し、大阪を副首都化することで、グローバルな都市間競争で日本をけん引するエンジンを増やし、まず二極型国家を実現し、将来的には多極分散型国家の実現を目指します。」とあるのが関西圏で受ける背景なのだろう。
甲南大教授・田野大輔さんによれば、ファシズムとポピュリズム(大衆迎合主義)には類似性をもち、分かりやすい敵を攻撃し、これによって人々の欲求を発散させるという「感情の動員」を図るのだそうだ。(東京新聞、2019年3月30日)日本維新の会にはそのようなからくりが見えるように思う。日本維新の会にとって「わかりやすい敵」とは「東京」ということになるのかもしれない。ファシズムとポピュリズムのイデオロギーは、大衆に心地よいスローガンを与えるという共通点をもっているが、東京を敵にすることで、支持者たちには一種のカタルシス(心のモヤモヤの解放)を与えるのだろう。
「維新」は英語で表現すれば、「restoration」で、英語の文献などでは「明治維新」は「Meiji Restoration」になる。以前、保守の論客であった渡部昇一氏と話をした時、彼は「維新」とは日本から仏教を排除した状態になることと語っていた。日本維新の会が仏教の排除を目指しているようには見えないが、ある種の「復古」を目指す運動であることは間違いなさそうだ。
「日本維新の会」の政策提言を読んでみると、「日米関係」については、「集団的自衛権行使の要件を厳格化するため、現行の『存立危機事態』の要件に代えて、『米軍等防護事態』(日本周辺で、現に日本を防衛中の同盟国軍に武力攻撃が発生したため、わが国への武力攻撃の明白な危険がある事態)を規定し、対象範囲を限定します。」とあるが、「これは対象範囲」を「限定」ではなく、アメリカとの集団的自衛権の範囲を「拡大」するというものだろう。後藤田正晴さんの言葉を借りればアメリカは「世界で最も戦争を行っている国」だ。
「教育」については、「機会平等社会実現のため、保育を含む幼児教育から高等教育(高校、大学、大学院、専門学校等)についても、法律の定めるところにより無償とします。」とあるが、1000兆円以上の国の借金がある中で、いったいどこにそれほどの財源があるというのか。
教育の中で特に内容にまで踏み込んでいるが、歴史であって「教養・教訓的観点のみならず主権者教育の観点からも、近現代史を中心とした歴史教育のさらなる改善・充実を図ります。」とある。「改善」とあるからには、現在の近現代史教育には問題があるということで、とっさに思いつくのは、日本の戦争責任の否定や見直しということだろう。
外交では「歴史的に友好関係にあるアラブ諸国との関係を強化し、対話を通じた中東和平の実現に向けて日本独自の役割を果たし貢献します。」とある。この一文に典型的に表れるように、維新の政策には具体性に乏しく、高等教育の無償化のように、人が賛成しそうな内容を列挙して、具体的な方途は示していない。「中東和平」も「パレスチナ和平」なのか、あるいは「中東地域全般」に及ぶものなのか、誰と誰の対話なのか、またどういう独自の役割なのか、まるでわからない。
深夜まで開票速報につきあっていてあらためて思うのは国会議員が多すぎるということだが、日本維新の会が日本に本当に必要な政党なのか、あらためて考えざるをえなかった。
写真は金澤ゆいさんの公式サイトから
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