過去のあやまちを決して忘れない

　スペイン出身のアメリカの哲学者で詩人でもあるジョージ・サンタヤーナ（George Santayana、１８６３～１９５２年）は「歴史を知らない人は歴史を繰り返す運命にある」
（“Those who don’t know history are doomed to repeat it.”）と述べた。

　旧統一教会との関わりが指摘された萩生田光一・自民党政調会長が加計学園（岡山理科大学獣医学部の今治キャンパスにおける創設）の問題で「総理は『平成３０年４月開学』とおしりを切っていた。」「文科省だけが怖じ気（おけ）づいている」「官邸は絶対やると言っている」などと発言していたことが、文科省高等教育局長の「（２０１６年）１０／２１萩生田副長官ご発言概要」に記載されていた。事実だとすれば（おそらく事実だろうが）、文部科学行政をゆがめた人物が文科大臣だったことになる。「加計学園問題」では政府が安倍元首相の長年の友人である加計孝太郎氏に特別な便宜を図ったことが疑われた。獣医学部の新設は５２年間どこの大学にも認められていなかった。

　萩生田氏は、２０１４年３月には従軍慰安婦の日本軍関与を認めた河野談話について、新しい事実が出てくれば新しい談話を発表すればよいという考えを明らかにした。常識的に考えて日本軍の関与がなかったという新しい「事実」が出てくることはありえない。歴史を「修正」しようとする人が文科大臣だった。２０１８年７月には「有力な国会議長を置いて改憲シフトを」という主旨の発言をしている。

「中国網日本語版（チャイナネット）」によれば、２０１５年９月１６日付で国連の潘基文事務総長が中国の招待を受けて抗日戦争勝利の式典に参加したことについて萩生田氏は「国際社会は韓国人に国連事務総長を担当する能力がないことに気づいている。潘事務総長が中国の閲兵式に出席したことは、ワールドカップの主審が特定の国の試合に参加したようなもので、不適切な行為だ」と述べたという。萩生田氏は、文科大臣としては極めて不適切な人選だった。萩生田氏は、高校時代も朝鮮高級学校の生徒を殴って停学処分を受けたという報道もあった。民族的ヘイト感情をもつ人物が文科大臣としてはふさわしくないことは言うまでもない。

　一橋大学の学長も務めた歴史学者の上原專祿氏（１８９９～１９７５年）は、「過去は単なる時間的経過の区切りのことではなく、過去は現在であり、現在は未来に結ばれている。われわれは、過去を背負って生きていくものに他ならない。」と述べた。

　萩生田氏の文科大臣の就任は、国民は文科行政を歪めたわずか２年前の過去を忘れていると舐められていたことを表していた。歴史観も怪しく、かつ旧統一教会問題では、民族主義者で、韓国を嫌っていたはずの萩生田氏がこの韓国の反日団体と親しい関係にあるという支離滅裂ぶりだった。日本の教育行政は大丈夫だろうかとあらためて思わざるを得ない。それにしても、日本人は加計学園の問題など忘れきっているのではないか、日本人の忘却癖も危惧せざるを得ない。
アイキャッチ画像は生田絵梨花
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