イスラエル出身のハリウッド女優ナタリー・ポートマンは2015年8月26日付の「インディペンデント」にホロコーストについて語った。ホロコーストについてそれを思い起こし、犠牲者に対する敬意を払うことは重要だが、「憎悪」はいつの時代にも存在し、ヘイトを受ける人々にも感情移入する必要があり、「我々は犠牲者だ」ということをパラノイア的に唱え続けるべきではないと語っている。「反セム主義」のようなヘイト・クライムは、いつの時代、あらゆる人々にも存在することを知らなければならないとも述べたが、彼女にこのような想いをもたせたのは、2007年のルワンダ訪問だったという。そこで1994年に発生したルワンダ虐殺に関する博物館を見学すると、大虐殺(ジェノサイド)は自分が教育を受けている時期にも発生していたものの、学校では教えられることがなかったことを知ったという。
ポートマンはイスラエルのネタニヤフ首相の「人種主義的な発言」にもゾッとするとコメントしたことがあるが、ジェノサイド、あるいはホロコーストは、ユダヤ人にだけ起きたことではない。1996年にワシントンDCを訪ねた時に、イラン社会の研究者であるエリック・フーグランド氏は1993年にナショナル・モールのわきに開館したホロコースト博物館について触れながら、「ホロコーストはアメリカのインディアンにも対してもあったし、広島・長崎への原爆投下だってホロコーストだ」と語っていた。現在のイスラエルの右派政権にとって「ホロコースト」という言葉はあらゆる非人道的な行為の「免罪符」になっている感もある。
2014年にイスラエルがガザを攻撃し、停戦が成立してから26日で3年が経った。イスラエルの圧倒的な火力で2200人余りが犠牲になったガザ攻撃も「ホロコースト」であることは間違いなく、ネタニヤフ首相などイスラエル右派勢力のパレスチナ人に対するヘイト的な感情も背景にあったことは間違いない。ガザでは、その後も経済封鎖が続き、今年5月に出された世界銀行の報告書によれば失業率は40%以上と世界で最も高く、特に深刻なのは若者の失業率が60%以上にも上るということだ。この報告書では、紛争やイスラエルによる経済制裁がなければ、そのGDPは報告書が出された時点の4倍は高いだろうとも見積もられている。2007年以来続くイスラエルのガザ封鎖によってガザのGDPは半減し、80%の住民が経済援助を受け、ガザの子供たちの3分の1が2014年のイスラエルのガザ攻撃によるPTSDの発症に苦しんでいる。
多くの無辜の市民の犠牲をもたらしたイスラエルのガザ攻撃は、ジェノサイドであり、まぎれもない戦争犯罪で、安倍元首相は参議院安保法制特別委員会で山本太郎議員の質問に答えて「戦争犯罪を行うような国には協力しない」と答弁したことがあったが、ならばイスラエルとの防衛協力は撤回すべきだろう。
アイキャッチ画像はナタリー・ポートマン https://twitter.com/natpdotcom/status/1014968225854033920 より

https://mainichi.jp/graphs/20160413/hpj/00m/040/003000g/10
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