長崎のクリスマス・ミサ ―聖夜に被爆者の歌が響く

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Translation / 翻訳

祷(いの)りは歌に歌は祷りに聖夜更(ふ)く/下村 ひろし(1904~1986年)

 これは「河北新報」に12月24日に紹介された俳句で、下村ひろし氏は長崎の開業医で、被爆者の医療活動に傾注した人だ。記事によると、下村氏には「消えぬ怒り 消えぬケロイド 原爆忌」などの原爆に対する怒りや心の傷痕を詠んだ俳句がある。長崎のクリスチャンたちにとって、クリスマス・ミサは原爆の被害者の鎮魂の機会ともなってきただろう。ミサの参加者と、既に亡くなった被爆者の魂の声なき声が一体となって聖歌を歌い、原爆の惨禍を繰り返しませんと誓う機会ともなっているようだ。冒頭の俳句は歌と祈りが重なり合って平和への想いが重層的に響いてくるような作品だ。

長崎市 下村ひろし 句碑 https://rubese.net/gurucomi001/?id=2684878

 米国人作家のスーザン・サザードさんは、「Nagasaki: Life After Nuclear War」を2016年に出版したが、”Ground Zero Nagasaki” という記事をTomDispatch.comに1月17日に寄稿している。「Nagasaki」は、サザードさんが親交があった谷口稜曄(すみてる)さんら5人の長崎の被爆者たちの苦難に満ちた戦後を描いていたものだが、記事の中でサザードさんは、真珠湾攻撃、日本の中国での残虐行為は確かにあったものの、米国は日本の66の都市を空爆し、668、000人の市民を殺害し、長崎では1945年の末までに原爆で74,000人の男女・子どもが亡くなったが、そのうち軍関係者はわずかに150人であったことを指摘し、これは現在では「テロリズム」と呼ぶべきものではないかと語る。

 多くの米国人が歴史の授業では、広島・長崎への原爆投下が戦争の終結を早めたと教えられるが、それにはなんの根拠もなく、冷戦時代の核軍拡を進めることに国民の支持を得るための政府の意図が背景にあり、このような政府の主張によって、広島・長崎で実際に起こったことから米国人たちは注意が向かず、いまだに核軍拡を支持する要因となっているとサザードさんは訴える。トランプ政権がロシアとの中距離核全廃条約から離脱を表明し、また1兆6000億ドルの核兵器の近代化計画をもっていることにも警鐘を鳴らしいる。

大浦天主堂のクリスマス
https://gurutabi.gnavi.co.jp/a/a_1545/

 一人の米国人が長崎の被爆者たちの困難をつぶさに観察して同情し、それを世界に訴え、米国の核軍拡に反対の声を上げている。核爆弾を投下された日本は、核兵器禁止条約を批准して被爆者の祈りに応えるべきではないか。

造物主が万物の形をつくり出したそのとき、

なぜとじこめたのであろう、滅亡と不足の中に?

せっかく美しい形をこわすのがわからない、

もしまた美しくなかったらそれは誰の罪?

オマル・ハイヤーム/小川亮作訳『ルバイヤート』

アイキャッチ画像は 

浦上天主堂
長崎原爆忌ミサ
https://twitter.com/shimodakengo/status/1424718587319619586 より

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