映画「ひまわり」と愛し合う人たちを引き裂く戦争

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 ひまわりの花言葉は「あなただけを見つめる」「愛慕」「熱愛」だが、イタリア・フランス・ソ連合作映画「ひまわり」は、まさにその言葉の通りに第二次世界大戦の対ソ連戦線で行方不明になった夫(マルチェロ・マストロヤンニ扮するアントニオ)を妻(ソフィア・ローレンが演ずるジョバンナ)が必死で探すというストーリー展開だった。広大なウクライナの地に咲き誇るひまわり畑の中で夫を探すシーンは切なく鮮明に印象に残り戦争の悲劇を見事に伝えていた。

リュドミラ・サベーリエワ
アントニオ(M・マストロヤンニ)を極寒の中で救うロシア人女性マーシャ役として登場。『ひまわり』初公開時、その清楚で可憐な姿が注目され日本でも親しまれました
https://twitter.com/…/status/1251754098405150720/photo/2


 映画「ひまわり」に似たような話は戦中、戦後の日本にも少なからずあったことだろう。2015年8月13日の神奈川新聞には、BC級戦犯としてフィリピンで死刑判決を受けた前川治助さんのエピソードが紹介されていた。戦死公報が前川さんの妻の邦子さんのところに届いたのは、終戦から2、3年後。邦子さんは子どもたちの生活のことを考えて再婚した。ところが前川さんは生きていてフィリピンで恩赦を受けて、1953年7月に横浜港に帰国し、巣鴨刑務所に収監された。さらなる恩赦で同年12月に釈放された。邦子さんは、巣鴨刑務所に再婚相手の夫とともに、前川さんと面会することもあったが、結局邦子さんは前川さんのところに戻った。若い頃に恋愛の末に結ばれた前川さんのことが忘れられなかったのだ。長女は邦子さんが16歳の時に生まれていた。邦子さんの再婚に際して前川さんの実家に引き取られていた子どもたちも、また邦子さんの再婚後に生まれた子どもたちも皆前川さん夫婦と一緒に暮らすようになった。(「神奈川新聞」2015年8月13日)

約10年ぶりに再会した前川治助さんと慶子さん(右)。15分間だけ許された面会の後、治助さんは巣鴨刑務所へ送られた=1953年7月22日、横浜・大さん橋
https://www.kanaloco.jp/news/social/entry-63596.html


戦争について


愛する人との時間を
奪っていくのが戦争だ
愛し合う人たちを
引き裂くのが戦争だ
愛する人を
亡き者にするのが戦争だ
だから僕は
すべての戦争に反対している  ―高木いさお(詩人)


 日本の農林省の資料によれば、ウクライナの農用地の面積は国土の70%で、「ヨーロッパの穀倉地帯」と形容されるように、ロシアやヨーロッパに穀物を供給してきた。農業関連の輸出品目トップは、2020年、「ひまわり油」(22.2%)、4番目が「ひまわり種かす」(5.6%)だからひまわりの生産はウクライナ農業にとっていかに重要かがわかる。ひまわりの原産地は北米で、スペイン人の船員が16世紀にその種をヨーロッパに持ち帰った。しかし、ヨーロッパでひまわりの消費が大量に行われるようになったのは、正教会が四旬節(レント)の期間に従来使われていた油脂の消費を禁止してからで、それから正教会による使用禁止令から免れたひまわりからつくられる食用油が注目され、その生産が拡大することになった。

山梨県北杜市明野で撮ったひまわり


 ウクライナ危機はエジプトなど中東イスラム諸国にも重大な懸念を与えている。エジプトは小麦の全消費の75%を輸入に頼り、さらにそのうちの85%がウクライナとロシアからの輸入だ。戦争という事態になれば、小麦からつくるパンの価格が上昇し、エジプト社会が不安定になることも十分予想できる。

アイキャッチ画像は映画「ひまわり」
https://twitter.com/himawari20…/status/1251759561427451904

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