12月25日と友情・契約の神 ー弥勒菩薩信仰の起源をつくった古代オリエントのミトラ教

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Translation / 翻訳

 12月25日は元々オリエントのミトラ教の祝日であり、この日は冬至にあたると考えられ、太陽が成長を開始する日とされた。現在でもイランで祝われるシャベ・ヤルダーもこの伝統を継承するものであろう。ミトラ教はアーリア人の光明神ミトラを信仰する宗教であるが、古代イランではゾロアスター教が国教とされるまで様々な神を信仰していたが、そのうちの一つがミトラであった。ミトラ教はアケメネス朝時代に小アジア(アジアの西端に突出した半島、現在のトルコ共和国のアジア側)に伝わり、紀元前1世紀にローマ帝国のポンペイウスが小アジアを征服したことによってローマにもたらされた。


 ミトラは友情や契約などをつかさどる神であり、ローマ帝国に入ると、帝国の守護神とされて広く人々の心をとらえていた。また中央アジアでは弥勒菩薩信仰に継承された(青木健『ゾロアスター教』講談社学術選書メチエ、2008年)。弥勒の語源となったサンスクリット語の「マイトレーヤ」は「慈愛」の意味があるが、ミトラ神の別名とされている。


 ミトラ教は牡牛を食肉処理して、その脂肪と髄からつくられる飲料を飲むと不死になるという密儀をもっていた。こうした密儀は広く軍人や商人層に受け入れられ、3世紀後半にはミトラ神はローマ帝国の最高神に吸収された。

ミトラ教は牛を密儀に用いた
http://www.ancient-origins.net/…/image/Cult-of-Mithra.jpg


 ブリタニカ国際大百科事典(英語版)の説明によれば、ローマ帝国領で活動していた著述家のセクトゥス・ユリウス・アフリカヌスが、221年に12月25日をキリストの誕生日にしたとか、またローマ帝国で太陽の復活日として広く祝われていた「dies natalis solis invicti (不滅の太陽の誕生日)」をキリスト教化したことがクリスマスの起源となったという説もある。

パレスチナ・ガザのクリスマス・ミサ
https://www.haaretz.com/opinion/2017-12-25/ty-article/santa-is-barred-from-gaza-for-security-reasons/0000017f-f565-d887-a7ff-fde567bd0000


 ギリシアのクレタ島は紀元前168年にローマ帝国とのビドナの戦いに敗れたことによって、ローマ帝国、ビザンツ帝国、ヴェネツィア共和国、オスマン帝国の支配を受けたが、オスマン帝国時代は他のギリシアの地域とは異なる社会発展の形態を遂げ、ここではキリスト教からイスラムへの改宗者の数が多く、またムスリム男性とクリスチャンの女性たちの通婚も進んだ。

クレタ島
http://www.telegraph.co.uk/…/crete%20lead%202-xlarge.jpg


 クレタ島は古代の地中海交易で活躍したフェニキア人とも交流があったが、12月25日はミトラ教の伝播とともに、オリエント文明の共存の在り方を示す日でもある。


アイキャッチ画像は「広隆寺」「弥勒菩薩半跏像」

弥勒菩薩ではなく、イランの女性
https://data.whicdn.com/images/31349740/original.jpg
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